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2011-03-06 00:00
(連載)中東民主化は米主導西側同盟の望んできたこと(2)
河村 洋
NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
欧米の知識人も、中東の独裁政権と王政には手厳しい。イギリスのダーラム大学のクリストファー・デービッドソン教授(Reader:英国系大学特有のポスト)は「ペルシア湾岸の富裕で説明責任を欠く王政諸国は、もはや中東の騒乱の影響を受けずにはいられない」と主張する。デービッドソン教授は「湾岸諸国の王政は、殆どの政党を非合法化しているので、一党独裁に近い」と述べている。社会的な格差と人権侵害だけが問題ではない。親族登用と現君主の長期支配によって、サウジアラビアとオマーンは有能な後継者の選定に問題を抱えている。よって、湾岸王政諸国の統治は行き詰まっている。イギリスのデービッド・ミリバンド前外相はツイッターで、中東の現状を1979年のイランよりも1989年のベルリンになぞらえている。
アラブ諸国の中でも、エジプトが民主化の将来を占う鍵となる。アメリカン・エンタープライズ研究所のマイケル・バロン常任研究員は「中東の改革によって、アメリカの指導者達は、清廉な統治を行なう国とだけ同盟を結べばよいという、歴史上かつてない好機が訪れている」と主張する。歴史上アメリカは、より強大な脅威を打倒するためにはスターリン政権下のソ連のような専制体制とも同盟しなければならないこともあった。ジョン・マケイン上院議員は、市民の運動に惜しみのない支持を表明し「圧政なき世界というロナルド・レーガンの夢の実現に向かう好機だ」とまで述べている。
中東の騒乱は、西側への対抗勢力にとって絶好の機会ではない。イスラム世界の民主化は、中国にも影響を及ぼす。カーネギー国際平和財団のミンシン・ペイ準上級研究員は「中国が経済成長本位の正統性だけでは立ち行かなくなっていることを理解し始めている」と指摘する。中国もエジプトのように社会格差と腐敗が深刻化しているからである。ペイ氏は「中国共産党は、台湾、メキシコ、ブラジルのような漸進的な民主化という難しい途を歩まねばならない」と主張する。
ロシアもまた反動勢力に過ぎない。NATO事務局次長のジョージ・ハコビアン卿は「ロシアは、騒乱を鎮めるためにリビアとイエメンの独裁政権に武器を輸送した」と述べている。中国と同様に、ロシアにとっても、中東の混乱はアメリカに取って代わる好機ではないのである。(つづく)
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