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2011-03-08 00:00
日中関係打開をめざす楊中国外交部長の発言を読む
吉田 重信
中国研究家
最近の楊潔篪中国外交部長の「日中関係を改善したい。今年が重要な一年である」との発言は、ひさびさに中国側から発せられた前向きな対日メッセージである。発言は、これまで中国側が毛嫌いしていた前原外務大臣が辞任したことによって、関係改善の障害がなくなったと中国側が判断したというよりも、発言のタイミングからみて、全人代開催に臨んでの中国共産党中枢部の対日方針についての決定を踏まえているものと見てよいであろう。
このような党中央の意向には、これまで尖閣問題をめぐっての中国側の強硬姿勢などによって、日中関係のみならず、そのほかの国との関係においても、中国がかえって孤立するなどの不利な状況が出てきた、との判断があるものと思われる。今回の全人代で審議される中国の今後の発展計画の実現には、経済を中心とする対日協力関係の進展が不可欠であるとあらためて確認したことや、本年5月に予定される日本での日中韓首脳会議に臨むにあたり、中国側は日本および韓国に対し「緊張緩和」に向けてイニシァチブをとることを目論むなどの考慮があると考える。
わが国政府としては、このような中国の動きを基本的には歓迎すべきであろう。ただし、日本側は、いわば「先手をとった」中国側のペースに巻き込まれるのを避けつつ、確固とした長期的な戦略に基づき対応すべきである。当面の懸案問題である、尖閣問題については、不測の事態発生の抑止、ないし実際に発生した際の危機管理措置(risk control management)などにつき合意を図ることによって、再び日中関係が緊張することなく、より安定した基盤を整備することを目指すべきであろう。このためには、今後とも潜在的な緊張要因である尖閣領土問題については、かつてトウ小平が提案したような、何らかの「棚上げ」方式によって解決を図ることが必要であろう。
他方、漁業区域の抵触にかかわる問題については、東シナ海の資源開発問題ともからめて、中国側が譲歩するならば、日本側も相応の譲歩をする(たとえば、期間を限って中国漁船に尖閣付近での漁猟をみとめる、または中国漁船が捕獲した魚類を日本側が買い取るなど)といった案も考えられる。これらの措置は、すでに日本側の「実効支配」のもとにある尖閣列島についてのわが国の領有権に対して、不利な影響が及ぶ可能性は少なく、また日中関係のひとつの「棘」を取り除くことに役立つだろう。なお、5月の日中韓首脳会議に、日本からいかなる首相が臨むかは、遺憾ながらいまのところ不確定である。日中関係多端のおり、国民としては、考えられる選択の中での最良の首相に臨んでほしいものだ。
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