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2011-03-20 00:00
(連載)アメリカは「中東民主化」をどのように支援すべきか?(2)
河村 洋
NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
カーネギー国際平和財団のミシェル・ダン上級研究員とブルッキングス研究所のロバート・ケーガン上級研究員は「エジプトの民主化に成功すれば、アラブ世界に非常に大きな影響を及ぼす」と主張する。エジプトはパン・アラブ主義生誕の地であり、イスラエルと最初に平和条約を結んだ国である。また、アラブ諸国では飛び抜けて人口が多い。両氏とも、エジプトに対しては、効果的で目的を絞った支援を行なうよう勧告している。「欧米の援助は、軍事よりも債務猶予や自由貿易協定といった経済に振り向けるべきだ」と、両氏は主張する。またジョン・マケイン上院議員とジョセフ・リーバーマン上院議員による最近のエジプト訪問の報告にも言及し、民間企業の投資を増加し、ハイテク産業の代表団を派遣することも訴えている。
ムバラク政権に反発する若者達が、経済と社会の不公平の是正を要求したことから見て、両氏の提言は妥当に思える。非常に重要なことに、両氏は、アメリカ政府がエジプト人による自発的な運動を尊重し、アメリカ型の民主主義を押し付けないように、と勧告している。ケーガン氏とダン氏は中東政策には省庁間の垣根を超えて強い指導力を発揮する人物が必要で、オバマ政権に中東政治変動担当の閣外特別代表(Czar)を任用すべきだ、というユニークな提案までしている。ムアマル・カダフィ大佐が権力の座にしがみついているリビアでは、事態が全く異なる。欧米の政策形成者達はリビアでの飛行禁止空域の設定を主張しているが、ロバート・ゲーツ国防長官は「アメリカがそうした任務をこなすことは難しい」と考え、イギリス、フランス、イタリアに作戦を委ねようとしていた。
オバマ政権がリビア介入に慎重だったので、ロバート・ケーガン氏、ウィリアム・クリストル氏、そしてブッシュ政権とクリントン政権で高官を歴任した外交政策と人権問題の専門家達が、オバマ大統領に対し公開書簡を送り、カダフィ大佐の圧政には特に飛行禁止空域の設定をはじめとした断固とした行動をとるように訴えた。外交政策イニシアティブのジェイミー・フライ所長は「アメリカと主要同盟国による飛行禁止空域の設定には、イラクとコソボの先例に見られるように、国連安全保障理事会の承認は必要ない」と指摘する。また「オバマ政権は、アメリカにはカダフィ氏の攻撃にさらされているリビア国民を守る道義的責任があることを忘れてはならない」とも主張した。さらにフライ氏は、リベラルなニューヨーク・タイムズ紙さえも「オバマ政権はリビアに関して矛盾だらけのメッセージを発してしまったので、現体制への圧力を鈍らせ、ひいてはアメリカの信頼を損なっている」との論説を展開しているとして、オバマ政権を批判した。
そうした中で、ヒラリー・クリントン国務長官はパリで国家政権移行審議会というベンガジ暫定政府の代表団と会談した。暫定政府が国際社会から承認されれば、リビアの海外資産の活用と共に、石油の輸出もできるようになる。フランスはこのカダフィ後の体制を承認したが、暫定政権はイスラエル・パレスチナ、イラク、アフガニスタンに関してアメリカに同意しているわけではない。しかし、これはエジプトのムスリム同胞団についても同様である。私は、そのことがアメリカにカダフィ体制への抵抗運動への支援を控えさせる正統な理由になるとは思えない。にもかかわらず、アメリカはG8パリ外相会議でフランスとイギリスが主張する飛行禁止空域の設定に同意しなかった。オバマ政権はブッシュ政権下でのイラク戦争の経験にトラウマを抱いているのかも知れないが、国連決議案への執着は必要な行動を遅らせるだけである。最終的にはオバマ政権もリビアへの軍事行動に踏み切ったものの、イギリスのメディアでは決断の遅さへの厳しい批判が目立つ。リビア問題はアメリカの現政権によるスマート・パワー活用の重要な試金石である。(つづく)
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