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2011-03-22 00:00
政治は「口を出さずに、金を出せ」ばよい
杉浦 正章
政治評論家
福島第一原発をめぐる動きを見ていると、「現場」は国の宝だ。現場が事故をここまで押さえ込んだのだ。素人の政治家が下手に口を出さない方がよい。チェルノブイリは「人災の暴発」になってしまったが、日本は管理された「押さえ込み」段階に入ったように見える。まだ予断は許さないし、完全なる「押さえ込み」の途中であるからこそ警告しておくが、政治は首相・菅直人以下、安易な言動を慎み、出来もしない「政治主導」など捨て去り、ひたすら「現場」が働きやすいようにせよ。いまとんちんかんな大連立を持ち出し、「政局ごっこ」をやっているひまはない。マスコミは新聞もテレビも冷静な報道に徹せよ。我が国民のガバナビリティ(被統治能力)の素晴らしさが証明され、対照的に政治家のガバナンス(統治能力)が問われる事象が頻発している。当面の原発事故における2大誤報は、先に指摘したが菅の「東北が潰れる」との歴史的な失言と、米原子力規制委員会(NRC)委員長のグレゴリー・ヤツコによる「4号機の使用済み燃料プールの水は、すべて沸騰し、なくなっている」の2つだ。
いずれも世界に向けて最大の“風評源”となり、性急にも3か国が大使館一時閉鎖、他にも東京退避の動きを生じさせた。これはすべて菅政権が情報の発信を曖昧にして、あらぬ疑心暗鬼を国際社会にばらまいた結果である。肝心のスポークスマンの官房長官・枝野幸男の発言も、口数は多いが、意味不明の内容が多く、信頼感に欠ける。菅は執拗に現地視察にこだわり、3月21日もその予定を直前でとりやめた。視察は現場や国民に安心感を与える首相なら効果があるが、菅の場合はやめた方がいい。受け入れ側の負担増大など、マイナス効果の方が多いのではないか。「現場」は優秀だ。任せておけば良い。一方マスコミも、今にも直ちに大事故に発展するような報道ぶりが目立った。最大の影響力を持つが故に指摘しておくが、朝日新聞の超センセーショナルな報道は極めて遺憾であった。トップの見出しを引用すれば、15日の朝刊における「2号機にも炉心溶融」に始まって、同日夕刊の「放射能大量飛散の恐れ」、そして16日朝刊の「福島第1制御困難」に至った。この「制御困難」が最大限の緊迫感を演出した紙面構成とあいまって、多くの読者を不安の極地に陥れた。しかし筆者が冷静に分析したところ、炉心溶融はあっても、致命的な規模ではなく、放射能の大量飛散は全くなく、制御は一進一退で、一歩一歩ではあるが実現に至ろうとしている。
この一連の見出しの背景には「炉心溶融による破滅」の思い込みが、同紙の伝統的な原発批判姿勢と相呼応して、編集局に圧倒的に存在していたとしか思えない。総じて冷静な分析力に欠けていたと思う。19日の朝刊で「電源きょうにも回復」とケロリとした報道をしているが、与えた影響は大きなものがあると、自ら肝に銘ずるべきである。22日朝刊も他紙と異なり、「首相、出荷停止を指示」をトップに据えた。枝野が「直ちに健康に影響はない。誤解しないように」と念を押しているにもかかわらずだ。過剰反応でいたずらに不安をあおる紙面が続く。このように冷静な分析のないまま、政府首脳やマスコミが突っ走ったのが福島原発事故初期の対応だ。よく国民がパニックに陥らなかったと思う。辛うじてNHKが冷静な報道と、専門記者・学者などによる適切な解説を行ったからだろう。まだ中期、後期の正念場が待っているからこそ、冷静な情報伝達が望まれるのだ。これに比較して東電、経産省原子力安全・保安院、自衛隊、警察、消防など「現場」の冷静・沈着・果敢な働きぶりは見事である。高レベルの放射能がある中での放水活動、電源確保の作業など、まさに身を挺して黙々と自らの職務を英雄的に遂行しているではないか。そこには旧ソ連のチェルノブイリにおける原発管理者の「いい加減」な対応はつゆほども見られない。
3月21日の段階では1、2、5、6号機に電源が到達、まず2号機の巨大ポンプを動かすべく懸命の努力が続く。制御室が稼働すれば制御に向けて大きな地歩を築くことになる。消防士の妻の「日本の救世主になってください」という激励は、全ての国民の気持ちも言い表している。急場における政治家の対応は、命がけの現場に怒鳴り込むことではない。この際「政治主導」なる空理空論は端に置いて、「現場主義」を貫くべきだ。餅は餅屋に任せて、大所高所から常に俯瞰していることだ。調整が必要になったら初めて乗り出せばよい。いまは急場である。常に「金の心配はいらない。任せておけ」と言い続けよ。政治は「口を出さずに、金を出せ」。被災現地では仮設住宅のつち音が響き始めた。つち音は今後壮大なる東北・関東復興への“轟音”と変えなければならない。「コンクリートから人へ」の理念は「人からコンクリートへ」と大きく舵を切るべきだ。既に考えていると思うが「東北・関東復興院」を早急に立ち上げ、復興への夢と希望に満ちた青写真を描き出せ。そして一定のめどが立った段階で政治は、出来るだけ早く首相を代える必要がある。
本人には悪いが、復興を成し遂げられる器とは思えない。それには超党派で救国大連立政権が不可欠だ。自民党も、公明党も、ここは選挙の勝敗などの党利党略を度外視して、考えられる限りの実力型の“精鋭”を出して「救国統一内閣」を構成するべきだ。時期を区切った政権でもよい。恩讐など捨てて、灰燼の中から日本を復興させるのだ。「小沢一郎」を復興担当相などに起用すべきとの意見があるが、刑事被告人をトップにいただいて復興が回転するか。ゼネコンを活用せねばならないときに、過去の癒着が問題にならないとみるのか。それほど人材は払底していまい。原子力発電は日本の繁栄と地球温暖化対策に不可欠な国策でもある。福島第1原発は廃炉にするにしても、国全体としては「あらゆる想定外を想定した」堅固な原発を再構築すべきだ。現在稼働中の原発にも電源の2重3重の確保など、やるべきことは多い。福島の経験は日本を「超原発先進国」へと発展させなければならないのだ。日本の力があればそれが可能だ。世界人類のためでもある。ここで原発を完全に押さえ込めるかどうかが、工業立国としての急所でもある。
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