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2011-03-23 00:00
(連載)世界に福島原発事故の正確な現状説明を (2)
角田 勝彦
団体役員
しかも各国で「日本の原発」のみでなく、「脱原発」とはいわないまでも、「原発自体の安全性と自国の原発計画」への疑問が生まれている。日本を含め各国で、国民の反原発感情の高まりが予想されるなか、二酸化炭素を出さない重要なエネルギー源として位置づけられるようになった原発について、安全性再確認が要求されているのである。安全規制が強まれば、投資家からみて原発以外のエネルギーが魅力的になっていき、原発の地位が低下する可能性がある。国内でも「東京が危ない」「天皇陛下は京都に避難された」などのデマ情報を振りまいている反原発論者(一部マスコミを含む)がいる。彼らにとって、世界一厳しい安全基準を高い技術で施行した日本の原発で、このような事故が発生したことは原発放棄のきっかけになるとも思えるのだろう。しかし、この事故への対策が新たな基準と設計と技術の世界的さきがけになるかも知れないのである。
3月15日のG8外相会議で、松本剛明外相は大震災への各国の支援に謝意を表明し、原発事故の対策については「想定範囲を超える地震で、(対応に)時間がかかる」と説明した。その後福島第1原発の2号機で爆発音が上がって原子炉格納容器の圧力抑制プールが損傷し、また4号機でも爆発音がして火災が発生、外部に高濃度の放射性物質が漏れたとみられたことから、懸念が広がった。米シンクタンク、科学国際安全保障研究所(ISIS)は15日、東日本大震災に伴う福島第1原発の事故について、「状況は相当悪化した」との見解を示す声明を発表した。米原子力規制委員会(NRC)のヤツコ委員長は16日の上院公聴会で、火災が発生した福島第1原発4号機の使用済み核燃料プールについて、大部分の水がなくなっているとの見解を示し、「事態が悪化している」と指摘した。
またEUのエッティンガー欧州委員(エネルギー担当)は、福島第1原発について「制御不能に陥っている。今後、さらなる惨事が起き、人命が脅かされる可能性もある」と欧州議会で述べた。これに対し英《はなぶさ》元駐イタリア大使は19日、駐日EU代表部に抗議文を送ったと伝えられる。我が国でも経済産業省原子力安全・保安院は18日、1~3号機の事故の深刻さを示す国際評価尺度(INES)を3番目に深刻な「レベル5」と暫定的に評価したと発表した。これは1999年の東海村臨界事故のレベル4を超える国内最悪の評価であり、原子炉圧力容器の底に燃料が溶け落ちた1979年の米スリーマイル・アイランド事故と同レベルである。こうした認識が、原発から80キロ圏内に滞在する米国民への避難勧告につながった。
大震災から10日を過ぎ、まだまだ足りないが緊急物資配布など被害者支援の目途もたった。今は自衛隊を含む公的支援が中心だが、もう少しでボランティア活動の開始も認められよう。復旧から再建も始まる。このままでは避難された住民の方々も動きがとれまい。「冷温停止」の目途が付いたこの時期に、可能な限り、原発問題に一区切り付けるのが望ましいのではあるまいか。(おわり)
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