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2011-04-01 00:00
災害からの「復興」ではなく日本「改造」を国家目標とせよ
松井 啓
日本大学講師
東日本大震災を機に、日本に「第三の奇跡」を期待する声が内外で高まっている。「第一の奇跡」は1868年の明治維新後の勃興、「第二の奇跡」は1945年の敗戦後の経済発展であるが、1968年(明治維新100周年)にドイツを抜いて世界第二の経済大国となった後、20世紀末(平成の時代)に低迷期に入り、「失われた20年」を経て、経済大国の地位に陰りが生じ、国際的な存在感も薄れてきた。そのタイミングで地震、津波、原発事故の三重の災禍が日本を強襲にした。日本人が「思いやりと協力・トモダチ」、「忍耐強さ・ガマン」、「努力と勤勉・ガンバレ」、「節約精神・モッタイナイ」、更に、一旦目標が定まった時の「団結力、組織力」等の資質(社会資産)を備えていることは、国際的にも定評がある。現在の萎縮モードのままでは経済は失速してしまうので、できるだけ早急に国家目標を設定して日本再生を図る必要がある。
戦後66年間使ってきた国家機構は、構造・組織疲労している。憲法、それに基づいた諸制度・機関・組織は、少子高齢化、経済のグローバル化に対応できなくなっている。この機会に国家機構を総点検し、一党一派、イデオロギー、原形復旧にこだわらない、抜本的な列島改造、再生計画を提示し、「安心・安全」の「日本ブランド」の立て直し、国際社会で尊敬される地位の回復を真剣に考えてみようではないか。その際には、新しい生活、新しい地域、新しい歴史を作り、世界のモデルになるくらいの心意気を国の内外に向け、鮮明に掲げるべきである。資源浪費型生活スタイルである「量と速度優先」から「質と人間性尊重」の生活スタイルへの転換を大胆に打ち出すべきである。迅速に「日本改造7カ年計画」を立てて、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ようにならないよう、危機感・緊張感を持続させ、着実に実施して行けば、2018年の桜の季節には、明治維新150周年を諸外国の首脳を招き盛大に祝賀することができよう。
以下に、検討事項のいくつかを列挙し、議論の収束の御参考に供したい。
第一に、この機会だからこそ一層安全な原子炉を建設することを鮮明にし、電力供給の拡大、クリーンで安全かつ安定的なエネルギー供給を可能とし、日本を電力列島とする。その際には、東西電力融通のネックである周波数相違の一元化を図る。
第二に、東京一極集中型から脱却し、都市機能を多極分散型にする。「今後半世紀は、東北地方の巨大地震達成率は低下し、マグニテュード9クラスの地震が起こるおそれは、関西以西の太平洋沿岸と瀬戸内海沿岸が危険地帯となる」との中央防災会議等の警告もあるので、精査のうえ、未来志向の産業集積地の配置、空間的リスク管理、国家リスク管理を検討する。
第三に、市街地を無秩序に広げると、道路や下水道等のライフ・ラインの管理が困難となるので、安全で質の高い住宅環境を計画的に整備し、分散している住居を集約して、公共サービスを効率化する。インターネットを大幅に導入し、孤住、孤死、極限集落、離島・無医村問題を解決し、日本人らしい協力と助け合いのコミュニティを造る。市街地の一角には、林と水辺を備えた公園と何もない草原の広場を作り、市民、特に子供たちが電子ゲームを離れ、雨の音を聴き、風や水の流れを感じ、太陽・月・星の動きを追い、自然との共生を体感できる場を提供すべきであろう。
第四に、土地所有制度を見直し、公共化する。国全体の社会資本を充実させる一方、地域主義の推進、地方の知事(市町村)の意見が反映されるように国政のあり方を再検討する。国会の二院制、選挙制度、(投票率が60%を超えることはまれである)の改革が必要であろう。
第五に、老後も安心して生きられるように、社会保障を更に充実させるが、時が至れば赤字財政の再建を推進する。安全な水と空気はタダではないこと、国民の一人一人が国に支援を求めるだけではなく、被災地の復興、新日本の建設、再生に向けた費用を共同して負担する覚悟が必要であることを啓蒙する。
第六に、国際的視野と能力を持った人材育成のための教育制度を創設すること。
第七に、食糧・資源・エネルギーの安全保障を視野に入れた産業構造改革を行う。特に、コメの自給に頼り過ぎた農業政策の変革は先送りできない。新しい農業を打ち出して、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)等の国際的動きの波に乗り遅れるべきではない。
第八に、中国・ロシア・米国と言う三大強国に囲まれている日本の防衛政策を冷徹に見据えて、日米同盟、自衛隊の地位・役割、集団的自衛権を明確にする。
第九に、以上の議論が国民的に収束すれば、最終的に再生日本のための憲法を採択(改正)する。
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