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2011-04-04 00:00
アジアの励ましにこたえる道
鍋嶋 敬三
評論家
東日本大震災(3月11日)に対し世界から大きな支援の手が差し伸べられている。外務省調べで4月3日現在、134カ国・地域、39国際機関から支援の申し出がある。20カ国・地域から緊急援助隊や医療チーム、国連機関からは原子力などの専門家が送り込まれた。日本は世界から寄せられた善意をしっかり受け止め、復興に全力を挙げて好意にこたえたい。一人当たり国内総生産(GDP)が684ドルの最貧国(LDC)バングラデシュからも毛布2000枚、長靴500足など被災地ですぐ役に立つ物資が届けられた。大震災の翌日には救助犬5匹を連れたシンガポールのレスキューチームが一番乗りの韓国と並んで日本に降り立った。人口僅か500万人の小さな島国だが、シンガポールでは政府や赤十字のほか草の根の義援金募集の活動が続けられている。
炭鉱経営者の一族である24歳の女性は、自らの財布から100万シンガポールドル(約65万円)を鈴木庸一・日本大使に贈った。街頭募金も盛んだ。大型のショッピングセンターでは折り紙で鶴を一羽折るごとに1ドルを日本に寄付するキャンペーンを実施、数多くの市民が鶴を折り続けた。人口の75%が中国系のシンガポールでは太平洋戦争中、日本軍による占領中に多数の中国系住民が犠牲になった。過去の歴史は忘れないものの、70年後の現在の日本とは峻別した大人の態度である。有力ジャーナリストの論調も日本への支援を呼び掛ける力強い励ましの言葉で彩られている。大地震、大津波、福島原発事故と三重苦にあえぐ日本に対する好意的な眼差しが印象的である。
その背景に3つの要因が挙げられる。(1)日本は近代以降も黒船による開国(1853年)、第二次世界大戦の敗北(1945年)、阪神大震災(1995年)などの災難に耐え、さらに強い国として復興した。(2)その根底に日本人の粘り強さ、規律正しさ、社会の連帯精神がある。大掛かりな略奪が横行した米ニューオルリーンズのハリケーン災害やハイチの地震に比べて、略奪もなく避難所で整然と並んで水や食料を受け取る姿は驚きの目で報じられた。(3)日本が他国の災害に際して率先して援助を実施してきた。2004年のインド洋大津波では世界が約束した10億ドルのうち日本は5億ドルを真っ先に拠出する約束をした。「今度は日本を助ける番だ」と紙面は訴える。
有力紙 The Straits Times は社説で大災害などの圧力に耐える日本人の精神的な強さをテーマに、平静さと品位を保つ「ガマン」の精神を高く評価した。第二次大戦中、ナチス・ドイツの攻撃に耐え不屈の精神で英国を指導したチャーチル首相のような特質を備えた指導者は現在の日本にはいないものの、日本人は困難に耐えて必ず立ち上がるだろうと大きな期待を示した。日本の足元、アジアからの熱い友情と強力な励ましはまことにありがたい。「透明性」を持って「開かれた」内外政策を「迅速に」策定して遂行することこそ、日本復興という世界の期待にこたえ、日本外交再スタートへの道につながる。チャーチル的指導者を欠く現代日本の政治状況の下で、それが可能になるのか、日本国民自身が問われることになる。
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