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2011-04-05 00:00
大震災の機に日本外交を考える
宮崎 厚
ベンチャー企業顧問
今回の東日本大震災は、確かに一大事ですが、平安時代にも、江戸時代にも、明治時代にも、このような地震・津波災害はあったのです。福島原発の放射能問題は重大ですが、広島・長崎で黒い雨の放射能を浴びた被害者の方でも、65年後の今日まで長生きされている方もおられます。犠牲者の方々には、心からお悔やみを申し上げたいのと、あやうく難を逃れて助かった方々には、それを喜び、生活の再建にぜひ力強く立ち上がって欲しいと思います。テレビのニュース解説者がよく使う「これからどうなるのでしょうか?」ではなく、「これからどうしようか」と、この際行動的に、前向きに、プラス思考で行きたいものです。今後の日本外交に関しても、今回の大震災の機会に、考えさせられる動きがありました。
まず第一は、平和利用の原発の放射能漏れですら、こんなに世界で問題となるからには、核兵器の爆発の場合は大変なことです。これまでの日本の主張は、広島・長崎といった原爆の唯一の被害者という立場からの叫びでしたが、あまり通用していなかった気がしていました。しかし、今回、どこの国の国民も皆放射能汚染を非常に恐れています。平和利用の原子力発電所の事故を恐れるのならば、核兵器が暴発した場合の危険性は、原発の比ではありません。核保有国の政府や国民に対して、原発の放射能漏れを恐れるならば、核兵器の脅威を無くすことはもっと重要です。核兵器の縮小や廃絶を求める外交を進めましょう。
第二は、「いざ」という時に、うろたえたり、騒いだりしない日本人の立ち振る舞いに、世界が驚嘆していることを知り、誇りを感じました。世界の人々は宗教も、国民性も、歴史も、社会制度も違いますが、人間として共有できる心情というものがあると感じました。各国間には紛争があり、それらは基本的には政府間の紛争ですが、それぞれの国民は、皆同じ人間として交流できると確信しました。今後の日本外交は、相手国政府の向こうに、その国の国民がいることを意識して進めてゆく必要があると思います。
第三は、今回の大震災を機に、各国から想定外の反応があり、驚きました。台湾の人たちから100億円もの義捐金を送っていただいたとか、モンゴル政府が公務員の給与の一部を義捐金に向けていただいたとか、その他多くの国の好意を知り、感銘を受けました。他方、驚いたのが、北方領土問題に関してロシア国内で、政治学者のリリヤ・シェフツォワ氏やロシア大衆紙の政治評論員ユリア・カリーニナ氏から、「日本に北方領土を返そう」という意見が出てきたことです。今回の震災のドサクサや日本政府の混乱に乗じ、日本との間に領土問題を抱えるロシア、中国、韓国がそれぞれどのように動くのかについて、ニュースに目を凝らしていたところ、韓国政府は放射能観測を口実に、竹島の実行支配強化に動き出しました。外務省の方が一応抗議をされたようですが、菅総理や松本外相は黙っています。今回の大変不幸な出来事に乗ずる韓国政府の動きには、悲しい気がしますが、これで各国の反応や態度を知ることができ、今後の日本外交の参考に資するべきでしょう。
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