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2011-04-09 00:00
ウルグアイ国民の支援と原発事故への冷静な対応
角田 勝彦
団体役員
外務省における最後の任地が南米のスイスといわれるウルグアイだった関係で、日本ウルグアイ協会という小さな民間団体のお世話をさせていただいているが、4月7日の外務省HPと朝日新聞でうれしいニュースを読んだ。エステベス駐日ウルグアイ大使が、4月6日午後、山花外務大臣政務官にお会いして、東日本大震災に対するお見舞いを述べるとともに,福島第一原子力発電所の状況について外務省が在京外交団向けに毎日ブリーフを行っていることに感謝する旨述べつつ、被災地への支援物資としてコンビーフ4600缶(約2トン)を供与させていただく旨伝えたというのである。この支援物資は,4日成田空港に到着し、6日にエスベス大使ご本人が付き添って宮城県石巻市に向けて輸送された。朝日新聞によると「日本の皆様が元気になりますように」とのメッセージが書かれた特別ラベルの缶詰である。
山花政務官からは,今回の支援物資の協力を始め,ムヒカ大統領が在ウルグアイ日本国大使館にお見舞いに来ていただいたことや、今回の事態に対するウルグアイ政府・国民の支援及び原発事故後の冷静な対応などに感謝の意を表明したという。もちろん海外からの支援は、ウルグアイに限ったことではない。物資支援に限っても130国余から申し出があり、そのうち4分の1ぐらいは既に実際に届いており、2割ぐらいは、今、まさに配送中の由である。有り難いことに、申し出の多さから日本国内の受入体制の問題等々で、なかなか思ったように支援が現地に届いていないという話も聞くほどである。需要も時間とともに変わって、マッチングの問題も生じるが、今は例えば保存のきく食料のニーズがある由で、ウルグアイのコンビーフも評価は高いだろう。
さらに注目すべきは、外務省が在京外交団向けに毎日行っているブリーフへのエステベス大使よりの感謝と、山花政務官からの原発事故後のウルグアイの冷静な対応に対する感謝である。筆者はこれまでの本欄で、「世界に福島原発事故の正確な現状説明を(03-22 及び03-23 )」、 「来日するサルコジ仏大統領に求めるもの(03-31)」、「官民挙げて内外の風評被害と戦え(04-01)」などと、何回か風評被害と闘うことの重要さを力説してきたが、この意味から、東京で着実に、日本への支援や客観的な情報収集をを含む活動を続けているウルグアイ大使館の姿勢を高く評価するものである。筆者は、かってウルグアイ在勤時代、ガラス固化体(埋設処分するため処理された高レベル放射性廃棄物)のウルグアイ近海輸送問題でウルグアイ国民の不安表明に直面したが、それを思えばいっそうである。
なおこの関連で付言したいのは、一部に伝えられる復興一時補正(4兆円?)財源確保のためのODA削減(2011年度当初予算に計上された5727億円の2割約1100億円の削減)論である。6日にOECD/DAC(経済協力開発機構・開発援助委員会)が明らかにした2010年(暦年)の各国のODA実績(暫定値)によれば、我が国の支出純額(ネット)実績は、前年比16.8%増の110億4522万ドル(9693億円)となり、2006年以来4年ぶりに100億ドルを超えた。このネット値では米国(301億5400万ドル)、英国(137億6300万ドル)、フランス(129億1600万ドル)、ドイツ(127億2300万ドル)に次ぐ第5位(前年同様)である(グロス値では前年同様,米国に次ぐ第2位)。貧しい途上国を含む世界の各国が日本支援に立ち上がっている現在、日本がODAを削減することは、大局的見地から一文惜しみの百失いになろう。1100億円はほかで対処できない金額ではない。当局の賢明な判断に期待する。
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