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2011-04-20 00:00
東日本大震災により、日本の衰退は加速されるか?
吉田 重信
歴史学専攻
答えが出るのは10年くらい先になるかも知れないが、この「東日本大震災により日本の衰退は加速されるか?」という設問について、いま考えてみたい。近年、つまり今次大震災発生の以前から、わが国内外の言論界では、いわゆる「日本衰亡論」が盛んであった。たとえば、2003年に出版された米国の宇宙研究者などによる『22世紀から回顧する21世紀全史』と題する未来予測では、「中国の躍進」に対して、「日本の衰亡」が21世紀の世界潮流の一つであるとして、指摘されていた。
したがって、今回の大震災以降の問題は、すでに指摘されていた日本の衰亡傾向がさらに加速されるか否かという問題であるともいえる。別の識者によれば、1755年のリスボンの大地震以降、かつての「覇権国」であったポルトガルが衰亡したように、日本も同じような衰亡の歴史をたどるかもしれないといわれる。確かに、日本には衰微の兆候は多い。主たる兆候は、50~60年後に6000万人以下に縮小すると予測される人口減である。加えて、中国をはじめとするBRICs諸国の発展の可能性を視野に入れれば、人口やGDPの規模などの統計数字の比較における日本の比重の相対的な低下の可能性は高い。
しかし、結論として、筆者は「日本がポルトガルのように衰退することはない」と考える。なぜなら、ポルトガルは、リスボン災害の後、むしろ自ら国際的に孤立することによって、世界発展の潮流から取り残されたのに対して、日本は恐らくはそのような孤立に陥ることはない、と考えるからである。今後の日本には、自らが世界経済を牽引する力は不足するとしても、中国をはじめとするBRICs諸国による発展の潮流に連動しつつ、発展する努力さえ惜しまなければ、立ち遅れる懸念はないからである。
このためには、国民1人1人の国際化への適応力を強化することによって、人口の減少にともなう国力の低下を補うことが肝心である。具体的には、シンガポールのように、海外から優秀な人材をもっと日本国内に受け入れる一方で、日本の優秀な人材がもっと海外に進出し、働く場をみつけることが重要である。たとえば、かつてニューヨークは、日本の企業や学術文化機関の関係者が最も多く居住する海外の都市であったが、いまや上海がこの地位に代わっている。試されるのは、このような日本の適応力と機敏さである。日本はいまや中国において製品を売っているだけではなく、芸術分野を含め日本の文化を売っているのである。たとえば宅配便やビル掃除などのサービス分野においても、日本の企業や個人が活躍している例が多いと聞いている。
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