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2011-05-11 00:00
京都議定書の目標数値切下げを世界に向けて提案せよ
河東 哲夫
元外交官
政府は浜岡原発停止だけで、「他の原発は今まで通り。新設も計画通り」ということで突っ走るつもりらしいが、それでいいのか?「原発がなければ、やっていけない」わけではあるまい。危険は地震だけではない。原発のパイプがずれただけで、日本に住めなくなりかねないことが、今回わかった。そういう事態を起こすためには、テロリストの爆弾でも、北朝鮮から飛んでくるミサイルでも、あるいは隕石の落下でも、なんでも十分だ。政府が「地震の可能性が低いから、浜岡以外の原発は安全だ」と言うのは、おかしい。
原発反対の市民の声は深く、大きい。これは、新しい政党を作るのに十分なエネルギーだ。別に第一党にならずとも、第三党くらいの地位でキャスティング・ボートを握ってしまえば、政府の政策を自分の思う方向にずいぶん引っ張れる。「既得権益の網の目を破ってしまいたい」と思う若者たちにおすすめする。
で、原発を段階的に廃止していくためには、どうするかだが、天然ガスや重油あるいは石炭の使用が不可避だ。地熱とか、太陽、風力だけでは、足りるまい。そうなると、炭酸ガス排出削減についての京都議定書を日本は守れなくなるだろう。だから、東北大地震の記憶が世界に残っているうちに、日本は「世界的に原子力から天然ガス、重油に暫時乗り換えるため、京都議定書の目標数値を切り下げましょう」と提案すべきである。「恥ずかしい」と思う必要はない。世界ではどの国も、自分の都合を堂々と打ち出してくるのだ。
原子力発電は、まるで道路建設のように、利権化しているのでないか? 原発関係の利権を失うのがいやだったら、天然ガス発電をめぐって新たな利権をこしらえればいい。そして10年くらい先には、天然ガスを分解するなどして水素を効率的に生産し、各需要者は燃料電池を具えて水素から充電していく、というシステムにしてはどうか。水素をめぐって新しい大きな利権を発生させれば、いま原発にくいついて離れない利権も、態度を変えるだろう。
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