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2011-05-16 00:00
(連載)大震災後の日本と世界: 悲観論には組みせず (1)
角田 勝彦
団体役員
東日本大震災から2ヶ月過ぎた。マスコミは、TVを中心に、壊滅した現地の状況を流し続けている。自衛隊やボランティアを含む支援者の献身的努力に関わらず、惨状はなかなか改善を見ない。原発事故の風評(放射能列島日本)の被害は、農水産品のみならず、工業製品の輸出にも及んでいる。街中で見る外国人の姿もめっきり減った。その街は節電で暗い。復旧の遅れと原発事故対策の不手際に、政治、特に指導者の責任を問う声は高まっている。
1755年のリスボン大地震後、大航海時代にはスペインと並ぶ強国だったポルトガルが衰退の一途をたどったことを例に挙げて、長い経済停滞に悩み、2010年には世界第2位の経済大国の地位を中国に譲った日本の行く末を案じる声が強い。日本から世界各国のメーカーへの部品供給が滞っているため、アジアや北米を中心に自動車などの生産が落ち込んでいるように、世界経済への影響を心配する向きも多い。
経済だけではない。日本の沈下と中国の興隆はアジアを中心に世界政治に影響しよう。チュニジア、エジプトの政権交代、リビアの内戦、イエメン、シリア、バーレーンなどでの混乱を生んでいる中東民主化の動きや国際テロ組織アルカイダの指導者ビンラディンの殺害は、世界の不安定化に輪を掛けた。福島原発事故を主因とする原発不信は、浜岡原発全面停止を一つの例として、世界各国のエネルギー政策に影響を与えており、電力不足のほか、火力発電増加などで、地球温暖化ガス削減の困難化をもたらそう。
しかし、あえて言えば、原発事故を含めても東日本大震災の影響は限られたものである。なお、死者・行方不明者合わせて2万5千人になる今次災害の犠牲者は、多寡で論ずべき対象でないが、人的被害も考慮しないわけにはいかない点、ご了解願いたい。すなわち、人類史上最悪の破局は、20世紀の2つの世界大戦、次いで中世の黒死病とされるが、日本を襲う天災だけに絞っても、東海地震(とくに東南海、南海地震と連動した場合)及び首都直下型地震は、さらに大きな被害をもたらす可能性がある。浜岡原発全面停止だけで安心するわけにはいかないのである。
東日本大震災の物的被害は、筆者の試算では当面我が国名目GDPの約6%と見られる。震災で損壊した道路や港湾、住宅、生産設備などの直接的な被害額は16~25兆円で、1995年の阪神大震災の約10兆円を上回り、戦後最悪の災害となる。宮城、岩手、福島の東北3県の資産額は70兆円、北海道、青森県、茨城県などを加えた被災7道県では175兆円であるが、うち9~14%が失われた計算である。これには放射性物質による汚染や、計画停電に伴う経済活動の損失といった間接的な被害額(東電賠償総額は5兆円?)は入っていない。また5月11日の農水省発表による農林水産業の被害は、1兆5054億円(阪神・淡路大震災の約17倍)である。津波の被害地域は、南北500キロの太平洋沿岸に及んだ。福島第一の放射能土壌汚染面積は約800平方キロに上る。(つづく)
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