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2006-08-30 00:00
パレスチナの地の「不公平」認識も必要
内田 忠男
名古屋外国語大学教授
8月25日付け、田久保忠衛氏の投稿で、同氏は「米国そして日本のマスメディアにはイスラエルとそれを支持する米国に批判的で、ヒズボラの『善戦』を称える調子の記事が少なくない」として「メディアはバランスをとった正確な報道をしなければならない」と主張しておられる。氏の結論に反論するつもりは毛頭ないが、それ以前に、米国や西欧の主要国がイスラエルに過剰とも言える肩入れをして、パレスチナ人の利益が不当に差別されてきた歴史も無視できないと思う。
周知の通りイスラエルという国家は、1947年の国連総会で「パレスチナ分割決議」が採択された翌年、パレスチナの地を独り占めする形で一方的に建国を宣言し、1967年の第3次中東戦争では、エジプトからシナイ半島とガザ地区、ヨルダンから東エルサレムとヨルダン川西岸地区、シリアからゴラン高原を奪取した。以後、国連安全保障理事会が「決議242」をはじめ繰り返し繰り返し、イスラエルに対し「占領地からの撤退」を求め続けてきた。
しかし、イスラエルはこうした国際世論を無視し続け、わずかにシナイ半島をエジプトに返還し、昨年になって漸くガザ地区から兵を引き揚げただけである。その後もガザ地区に侵攻を繰り返していることもご承知の通りである。この間、パレスチナ人の側も2次にわたるインティファーダをはじめ、さまざまな形でイスラエルに抵抗や攻撃を繰り返してきたことも事実だ。しかし、それらの攻撃の大半は投石やごく原初的な武器しか使えなかったのに対し、イスラエルは最新兵器を駆使した形で対イスラエル抵抗運動に関係のない無垢の人命までを多数奪ってきた。
我々の攻撃は常に「テロ行為」とされ、イスラエル側の強大な武力攻撃は「正当防衛」のように規定される不公平は容認できない--というパレスチナ人、アラブ側の言い分にも耳を傾ける必要がありはしないか。イスラエルが核兵器を保持していることは国際社会の常識だが、主要国や国際機関がこれを表立って非難したこともゼロに等しい。イスラエルに対し「腫れ物にでも触るような」優しい姿勢を取り続けてきた。いま、イスラム原理主義の過激派が「聖戦」を宣言し、自爆テロを含めたさまざまな攻撃で世界中を不安に陥れている根源が、このパレスチナの地の「不公平」にあることは明白である。筆者自身は、現実の問題として中東和平が実現する可能性は皆無に近いと見るが、国際社会は従来とは全く異なる発想と手段を本気で編み出す努力を始めなければならないと考える。
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