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2011-05-17 00:00
国の責任と東京電力の責任を混同するな
宮崎 厚
ベンチャー企業顧問
震災と津波という天災に襲われて家族や家や生活手段のすべてを失われた方々の苦難と、福島第一原発事故に伴う放射能汚染という人災によって避難勧告を受けた方々の苦難とでは、同じ苦難といっても、問題の性質が相当違うと理解しています。天災に関しては、責任問題など一切かかわりなく、とにかく強い気持ちで復興に立ち向かう被災者の方々を、全国民のみならず、世界中の方が共感して、だれもが支援するのは、衆目の一致するところです。しかし、原発避難の方々に対する賠償問題は複雑です。いわば人災に対して、政府の強権で無理やり地域から退去させられるわけで、それらの方々にしてみれば、戦時中にB29の空襲を避けるために強制された集団疎開を、今の平時に突然再現されたような思いではないでしょうか。私の両親からは、当時政府が賠償してくれたとは聞いていません。今は平時なので、財源の限度もあり、政府の裁量で賠償を考慮しましょう。しかし、青天井の無期限・無制限の賠償はおかしいと思います。あくまでも慰謝料・生活回復資金として、一括一時金であるべきはずです。
東京電力にどれだけ責任があるかといえば、法律違反がない限り、事故は天災という不可抗力によるものであり、賠償責任は免除されてしかるべきと考えます。しかも、東京電力は、これまで長期間に亘って、政府指導による原発関連のリスク料として、何兆円もの交付金、補償金を既に支払い済みです。これは当然今回の賠償金から差し引かれるべき性質のものでしょう。今回の原発事故の責任は、むしろこれまで原子力の「安全」だの「保安」だのを言ってきた数多くの政府機関の責任者、およびそれに加担してきた有識者の方々の判断ミスでしょう。かといって、今となって、それらの責任者や有識者に責任負担能力があるとは思えません。出来ることは、それらの機関を閉鎖して、関係者にはその地位から降りていただくことくらいでしょう。
東京電力に事業者責任があるとすれば、民間企業であり、倒産しても致し方ありません。他の発電所等の健全資産をどこかに営業譲渡でも行い、それをもって賠償清算会社として、被害者への賠償金に充てたらどうでしょうか。売却先は、場合によっては海外の投資会社であっても構いません。最も高い値をつけたところに売却しましょう。発電所や送電設備などを、外国に持ち出すわけにはいかないのですから、これが被害者の方がもっとも納得する解決方法かもしれません。それが、究極的に国民負担を避けるためには必要です。
今回の大震災において、日本の政治は「国民の生活活動や、経済活動に介入してはいけない」という自由主義・資本主義・民主主義の掟を破ってきたのではないでしょうか。国民の前に政府が立ちはだかって、「福祉国家の名のもとに、あれもやる、これもやる」といっても、実際にやっているのは、資金を出すのは国民の税金から、対策を出すのは現場の意見から、義捐金を出すのは国民の懐から、という具合であって、なにもかにも国民です。それにもかかわらず、政治は、法律で強制しよう、経済を規制しよう、国民生活を指導しよう、とするばかりであることが分かってきました。民主主義の政治とは、国民から託された外交や安全保障の分野に限定されるべきであり、政治が国民生活にあれこれとかかわり、国全体を統制するためのものではありません。
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