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2011-05-17 00:00
(連載)大震災後の日本と世界: 悲観論には組みせず (2)
角田 勝彦
団体役員
巨額であることは確かである。しかし日本は名目GDP500兆円の大国である。東日本大震災で、日本経済は、供給ショック(部品の供給網が寸断され、生産が落ちる)、電力不足及び原発事故による日本ブランドへの信頼性の動揺といった悪影響を受けているが、IMFは4月13日発表した世界金融安定報告で、震災が日本経済に与える影響について「不透明感が強く残るものの、マクロ経済に与える影響は比較的小さいだろう」とした。日銀も4月28日の金融政策決定会合で、経済成長率を1月時点の前年度比プラス1.6%から大幅に引き下げて年0.6%としたが、秋以降回復し、震災の復興も進むことから、2012年度の成長率見通しを、1月時点の2.0%から2.9%に引き上げた。世界経済についても、IMFは2011年の世界経済の成長率を前回1月の予想と同じ4・4%と予測している。大震災直後の円高防止の先進7カ国(G7)協調介入は金融安定に役立った。「金融大津波」が防止されたのみならず、G7の結束が確認された。
なお原発事故は、日本のみならず各国、とくに欧州の原子力政策を揺さぶった。リスボン大地震の被害にショックを受けたジャン=ジャック・ルソーが「被害の深刻さは、あまりにも多くの人々が都市の小さな一角に住んでいることから起こったものだ」とし、都市に反対し、より自然な生活様式を求める議論を展開したように、「原発の代わりに太陽光、風力、水力などの自然エネルギーを活用せよ」と説く人々に力を与えたのである。しかし技術面からも脱原発が容易でないことは明らかであり、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5か国(BRICS)の首脳も4月14日、「原発増設は不可避」との認識を示した。我が国も安全性を高めつつ、原発を継続利用することになろう。
原発事故の予防及び発生時の国際協力は進展しよう。国際原子力機関(IAEA)は、日本政府の要請に基づき、今月後半、IAEAの担当者と各国の専門家らで構成される調査団を日本に派遣した後、その暫定報告書に基づき6月後半の閣僚級会合で原発の安全対策を世界規模で協議する予定である。5月下旬の仏ドービルでのG8サミットでも、原発は重要議題である。原発事故発生時の各国間での情報共有体制強化が期待される。原発事故は「核なき世界」への動き及び核テロ防止へも好影響を与えよう。放射能に対する世界中の人々の関心と知識は格段に増大した。北朝鮮とイランの核開発が、これまでよりずっと一般の関心を呼ぶことは明らかである。当局の取り組みも真剣さを増すだろう。
ほかにも明るい点が見られる。第1に挙げねばならないのは、日本国民の一体化の確認である。天皇・皇后両陛下のお働きも「国民統合の象徴」を具体的に示すものであった。憲法記念日は静かに過ぎたが、日本国憲法の基本とする平和と民主主義は世界に新たな広まりを見せた。中東の民主化については米国オバマ政権の態度を生煮えと非難する向きもあるが、平和を重視し、軍事介入に消極的なことは評価すべきである。5月1日ビンラディン殺害へのイスラムの反応は、民主化に希望を持った民衆が聖戦思想を支持しなくなったことを意味する。これもパラダイム(思想の枠組み)としての友敵構造からウィンウィン構造への進歩を意味するものではないだろうか。(つづく)
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