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2011-05-18 00:00
「国会閉幕反対」を軸に、“菅包囲網”
杉浦 正章
政治評論家
さすがにこの緊急時に「国会閉幕逃げ切り作戦」はいただけない。自民・公明・共産の各党に加えて新規に発足した超党派の「民自連」までが、5月17日、「会期延長」で固まった。自公両党は「会期延長がなければ、内閣不信任案を上程する」という。いわば、会期延長をきっかけにした首相・菅直人への“包囲網”が出来上がった形だ。閉幕方針は、被災者無視の政治道義上の問題であり、自己保身で国会を閉じられると踏んだ民主党政権の常識が疑われるところだろう。政権内には「小幅補正の小幅延長」で対処する動きが出ているが、野党は「姑息だ」としており、そう簡単には受け入れまい。
「絶好の口実をつかんだ」と判断したか、優柔不断の自民党総裁・谷垣禎一もようやく本格的“倒閣路線”に踏み込んだ。公明党も同調せざるを得ないだろう。谷垣は「復旧の分野でやるべきことは多く、予算化する必要がある。菅首相が国民の不安を解消できないのであれば、政権担当能力がないということだ。そうであれば、不信任決議案も考えなければならない」と明言。幹事長・石原伸晃にいたっては「国会逃げ切り閉会なるものを、菅首相が本当に考えているならば、亡国だ。万死に値する」とまで言い切った。公明党代表・山口那津男も「しかるべき条件が整えば、菅内閣に対する不信任決議案を提出するということは、一般論としてはありうる」と流れに乗る構えだ。
谷垣の動きの背景には、菅の閉幕方針が絶対に世論に受け入れられず、追及の絶好の目標が生まれたと判断したことにある。折から優柔不断の谷垣に対する風当たりも強まりはじめ、「菅降ろしの前に谷垣降ろしだ」という声まで生じていた。加えて元首相・森喜朗など党長老らからの“圧力”も相当あったと言われる。森は5月16日に、「民主党を含めどの政党も『菅直人首相を代えるべきだ』と言っている。自民党が提出する場合は『民主党の中で100人近くが賛成する』という人もいる」と述べ、執行部に不信任案提出を促している。森の動きの背景には、持論の大連立指向があることは確かだ。昨年森らに反発して町村派を離脱した自民党参院政審会長・山本一太のブログでの分析によれば、森の意図は「内閣不信任案を出して、万一可決されれば、菅総理は退陣。退陣すれば、次の総理の下で連立をやる。可決されなくても、民主党の内部が割れる。離党したグループと結んで、連立につなげていけばいい」というところにあるようだ。しかし山本は、不信任案反対から賛成に転じた。
もっとも、こうした長老主導による大連立の思惑に中堅・若手らの反発する空気は強い。5月17日に発足した「民自連」もその傾向が濃厚だ。民主党から87人、自民党から22人の合計109人 だからかなりの数が集まった、自民党の場合は、森などの長老支配への反発が強いようだ。一方民主党の場合は、中間派が多く、呉越同舟だが、その数から見ても、小沢一郎にはくみしないが、菅にも批判的な議員が身の振り方にいかに苦悩しているかを物語っている。議連は、あからさまな「菅降ろし」とまではいかないが、国会延長を議決したことからみても、「非菅」では共通項がある。ポスト菅で、小沢主導ではない大連立を目指す流れを内包しているとも言えるだろう。
このように様々な思惑を秘めながら、大きな政界の潮流は会期延長へと向かいつつある。これに対して民主党執行部は、慌てて方針を転換しそうな雲行きだ。2次補正をやるしかないという空気が出てきたのだ。しかし、その規模は被災者への支援金加算分など数千億円から1兆円弱程度の小規模で、延長幅も1~2週間の小幅にとどめたい方針のようだ。この方針からは、依然「保身のための逃げ切り」作戦がうかがえる。一方自民党は、独自の2次補正案を6月上旬にもまとめるが、規模も内容も本格的な復興補正となる見込みであり、民主党の小幅案はとてものめまい。いずれにせよ、補正があろうと、なかろうと、自公両党の不信任案上程方針は、倒閣が目的であり、変えないだろう。参院でも問責決議へと連動する動きがある。
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