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2011-05-18 00:00
対米自立なしに、日本の対ロ政策なし
吉田 重信
china watcher 研究所主幹
5月5日付けの本欄への拙投稿「日本と中国を両てんびんにかける米国政府」において、筆者は、米国政府が日本の対米政策と対中政策を牛耳っていることを指摘した。さらに、最近ウイキリークスによってリークされた米政府内の文書では、米国は日本の対ロシア(ソ連)政策をも牛耳っていることが明らかにされた。すなわち、在日米大使館が米政府に送った報告によれば「日本政府の対ロシア(ソ連)政策は不在であり、日本政府には対ロシア(ソ連)関係を打開する意欲がない」と批判されている。しかも、米政府のこの認識は、ロシア(ソ連)から得た情報にも基づくものであるとされている。
筆者の理解は、このような在日米大使館の(日本の対ロ政策についての)評価と一致している。しかし、筆者に異論があるのは、日本の対ロシア(ソ連)政策の不在をもたらしているのは、米国の責任であるということである。なぜなら、日ロ(ソ連)関係の発展を阻害している北方領土問題は、第二次世界大戦の終結の直前に米ルーズベルト大統領がソ連のスターリン書記長に対日参戦を要請したことによってもたらされた、という歴史的経緯があるからである。
ソ連は、米政府の要請に基づいて、対日参戦し、北方四島を占領したのである。しかもその後、1956年の日ソ交渉の際に、対ソ関係の打開に熱心であった旧鳩山政権が、二島返還で交渉を妥結しようとした寸前に、米政府は「日本が二島返還に応じるならば 米国は沖縄を返還しない」として、日本政府に圧力をかけたのである。その結果、日ソ関係は領土問題をについて妥結をみることができず、今日に至っている。この経緯については、日ソ外交の研究者の間では、共通した認識がある。
以上の米国政府の動きは、米国政府が、その戦略的視点から、日ロ(ソ連)関係が進展することを警戒していることを意味している。結論として、今後、日本がロシアに対して「政策不在」と批判される状況から抜け出すためには、日本の対外政策全般を牛耳っている米国の意向から自立するしかないと考える。
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