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2011-05-25 00:00
避けられない政界“6月上旬の乱”
杉浦 正章
政治評論家
タイや中東では首相が外遊の時によくクーデターが起きる。首相・菅直人がサミットに出発したが、帰国する5月29日までの6日間はいかにも長い。日本ではクーデターは発生し得ないが、この間に“菅包囲網”が一段とその輪を縮めることは確かだ。自民党は、6月1日の党首討論の終了を待って内閣不信任案を上程する構えであり、そのための党内外の工作を活発化させる。“6月上旬の乱”は避けられない形勢となって来た。さすがに朝日新聞の「声」欄はしっかりしている。社説が菅支持を打ち出しても、堂々と政権交代の主張を掲載している。5月20日付の同欄には「菅直人首相の震災対応能力に疑問が呈されても『この危機に菅降ろしは論外』との主張がある。この危機だからこそ政治の立て直しにためらいは許されない。非常時の名の下で政権批判を封じるような民主主義の自殺行為は決して許してはならない」という投書があった。
もっともである。この国の知識層の間には、政治家のやっていることの全てを「汚い」とか、「権力闘争」とか、と一段下に見る風潮があるが、「人を見る目」を職業としている多くの政治家が、大震災に当たっての菅の「政治」に「ダメ出し」をしていることを一概にそう決めつけるのはいかがなものか。「国難の時に…」という議論には、「菅の存在自体が国難だから、一段落したいま国難除去に当たる」という反論が、容易に成り立つのだ。こうした主張に急速に傾いているのが野党だ。5月24日に自民、公明、みんなの各党が不信任案提出に向けてルビコンを渡った。自民党は役員会で「菅内閣を今の国会で退陣に追い込むべき」という意見が相次ぎ、総裁・谷垣禎一は「菅政権は、原発事故の情報を隠蔽し、組織も動かせない政権だということが浮き彫りになってきている。政権を延命させることは許されず、全力を挙げて打倒していく」と表明、役員会は不信任案提出を総裁一任とした。公明党も自民党と共同提出する方針を固めた。自民党には「もう止まらない。勝とうが、負けようが、勝負度外視でなだれ込む」(幹部)と言う流れができてきた。
その「勝負度外視」だが、確かに勝つか、負けるか、はまだ分からない。最低75議席が与党から不信任案に同調しない限り、可決されないからだ。そこで小沢一郎が展開している不信任案同調の署名活動の行方が注視されるところなのだ。小沢が一切数を外に出さないことについて、「達していない証拠」と見る説があるが、小沢の手法からいって、落ちこぼれを防ぐために、ぎりぎりまで手の内を見せないのだという見方が正しいだろう。小沢は既に「離党も覚悟」でやっているとしか言いようがない。物言いも「谷垣でいいと言っているのに、谷垣は動かない」と“谷垣首相”も辞さぬ構えである。こうした中で5月24日の渡部恒三との合同誕生パーティーに160人が集まったことをどう見るかだが、少なくとも菅にプラスの動きではない。「誕生パーティーをやる」と、菅との会食で報告していた政界風見鶏・渡部が、厳しい批判に転じたのだ。渡部は「菅首相のことは尊敬していないし、岡田幹事長も気が利かない。党員みんなが、代わったほうがいいとなれば、代わってもらう」と、「菅降ろし」ともとれる発言をしている。誕生会は小沢にとって「反菅ムード」の醸成に向けてプラスに作用したとみるべきだろう。
同日夜小沢は、前首相・鳩山由紀夫、参院議員会長・輿石東と会食しているが、「党を割らない菅降ろし」が基本の鳩山との調整がポイントであったと思われる。少なくとも3者は「菅と岡田のままでは党が駄目になる」という認識では一致した模様だ。菅が駄目なのは常識だが、確かに岡田克也も幹事長になってから期待はずれの言動が多い。政権与党をまとめる力量がないのだ。統一地方選挙の敗北にしても「原因は党が割れたこと」と述べて反感を買っているし、責任放棄の姿勢もありありだ。野党に対しても、谷垣が5月23日の質問後に、菅の答弁について、「うその上にうそを塗り固めている」と感想を述べたことを取り上げ、「国会審議の冒とくであり、自らの質問の力が足りなかったのを言い訳したと受け止められても仕方がない」とまでこき下ろした。これでは野党との法案の調整などとてもおぼつかない。菅と“心中”するつもりとしか思えない。若手議員が離党して、不信任賛成の方針を明らかにしたが、岡田の求心力の無さを象徴している。参院議長・西岡武夫の菅批判のボルテージも上がる一方であり、6月上旬の“滝壺”に向けて大河の流れがその速度を速めている。
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