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2011-06-01 00:00
(連載)米外交官による日本の対露政策批判(2)
袴田 茂樹
青山学院大学教授
北方領土問題行き詰まりの根本原因は、国家主権の問題に真剣勝負で対応してこなかった戦後65年間の日本外交のツケが回ってきているということである。日本は、北方領土の占拠を「第2次大戦の結果」として既成事実化しようとするロシアに対して、「絶対に認めない」という意思を常に明確に示し続けなくてはならない。必要なのはそのための政府の統一した決意と練られた戦略である。
ロシアが強硬姿勢に出る理由は「自民党時代も含め、日本の北方領土返還要求は真剣ではない。強い発言は国内(国会)向けで、行動面では事実上北方領土問題は棚上げしている」と見ているからである。日露行動計画(2003.1)や麻生・プーチン会談(2009.5)でも、日本政府の対露政策は実際には、経済関係やエネルギー協力の発展を前面に出していた。したがって、ロシア側は首脳会談の場での日本側の「強い要求」を、今や恒例の「儀式」とさえ見ていた。昨年メドベージェフ大統領の北方領土訪問後、河野駐露大使を「一時帰国」させただけでも、ロシア側は少し驚いた。しかし、横浜での日露首脳会談への影響を恐れた日本が、河野大使を急いでモスクワに帰任させたので、ロシア側は「日本は主権問題に真剣ではない」との自らの確信をますます強めた。
かつて、野中自民党幹事長が「平和条約と領土問題は切り離してもよい」と受け取られかねない、およそ主権意識やまともな国家観を欠いた、また政府の基本路線にも反する発言をしたことがある(2000年)。この発言を、鈴木宗男議員は擁護し、東郷和彦欧亜局長(当時)は「真剣に受け止め」た。この直後、日本政府は、1956年の日ソ共同宣言を前面に出すアプローチをした。これらを見てロシア側は「日本政府の4島返還要求は真剣ではない」と解釈した。公式的に日本政府は4島返還論を取り下げたことはないが、ロシア側はそれを単なる国内向けのタテマエと見ているのだ。
主張の真剣度は、そのためにどれだけ自ら経済的その他の「痛み」を覚悟するかによって示される。痛み、あるいは犠牲を払っても、主張すべきことは主張する、それこそが結果的に相手からの尊敬を得る道でもある。逆に、「気配り外交」の結果言うべきことも言わず、自ら何の犠牲も払わず、主張は単に口先のみで、行動が逆方向を向いているとき、相手は喜ぶかもしれない。しかし、相手からも、国際社会からも、日本は軽蔑されるだけである。(つづく)
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