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2011-06-02 00:00
(連載)米外交官による日本の対露政策批判(3)
袴田 茂樹
青山学院大学教授
メドベージェフ大統領の「型にはまらない(独創的)アプローチ」とは何を意味するか。2009年9月の鳩山首相との日ロ首脳会談では、メドベージェフは「平和条約交渉を一層進め、精力的に行っていきたい。独創的なアプローチを発揮する用意もあるし、同時に、法的な範囲の中で議論を行うことも重要である」と述べた(外務省)。「法的な範囲で議論」という言葉がキーポイントで、これは間違いなく「日ソ共同宣言の枠内で」という意味だ。というのは、ロシアは国会で批准された日ソ共同宣言だけが法的効力があるとして、東京宣言などを無視しているからだ。
あらゆる情報を総合した結果であるが、メドベージェフ政権下でも、ロシア側には日ソ共同宣言を踏み出して国後、択捉の交渉を本気で行おうとした気配は、当初から一切なかった。それどころか、彼は第1副首相として2006年以来の「クリル発展計画」に関わり、色丹島を含む北方領土で学校、病院、発電所、飛行場などの建設を始めた。これは、ロシア領としての既成事実作りであり、島の住民たちも「ロシア指導部にはもはや島を日本に返還する意思はない」という意味で受け取っていた。日本はメドベージェフの「独創的アプローチ」という言葉に過剰な期待と幻想を抱いた。大統領がこの言葉を使ったのは、日本に対する要求としてであった。
ここまで述べれば、「メドベージェフは柔軟な態度を有していた。しかし、2009年5月の麻生首相の国会での『不法占拠は遺憾発言』や6月の『北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律の一部を改正する法律(北特法)』の中の『不法占拠』とか『固有の領土』の言葉が、また北方担当相だった前原誠司氏の2009年10月の『不法占拠』発言がロシア側の態度を硬くした」との論がナンセンスだということは明白だろう。
「不法占拠」とか、「固有の領土」という言葉は、これまで政府や日本の指導者が長年にわたり当たり前の用語として使ってきた言葉であり、前原発言なども、当然の筋論だ。ロシア側が日本の政治家の「強硬発言」について云々することがあるが、これは、ロシア側の強硬姿勢を正当化し、さらには今後の日本の政治家のそのような発言をタブー化しするために、絶好の口実として利用されただけである。(おわり)
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