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2006-09-01 00:00
イラン核開発をめぐる対決回避に日本は知恵を出せ
吉田 康彦
大阪経済法科大学客員教授
ウラン濃縮活動停止期限を過ぎたが、イランは無視して濃縮を続けている。停止期限といっても国連安保理P5(常任理事国)にドイツを加えた6カ国が包括的妥協案を提示し、その際に採択した安保理決議で一方的に設定したもので、拒否したら国連憲章第7章にもとづいてイランを制裁するという。イラン政府は濃縮を継続しているだけでなく、プルトニウム生産(再処理)のための重水炉も建設中である。西部アラクには重水生産設備も完成し、「核燃料サイクル」確立を目指して着々と手を打っている。圧力に屈する気配はなく、対決の時は刻々と迫っている。包括的妥協案は、イランが濃縮・再処理を止めるならば商業用軽水炉を提供し、米国の長期経済制裁で供給が途絶えている航空機の補給部品なども供与するという従来にない譲歩を示したのだが、イラクはあくまでも「原子力平和利用の権利」をタテに既定の方針を貫く構えだ。
たしかにNPT(核不拡散条約)第4条は「平和利用は加盟国の“奪い得ない権利”」と規定しており、イランの主張には正当性があるが、同時に「平和利用に徹していることを証明するため、全核物質をIAEA(国際原子力機関)の「保障措置」下において査察を受け、さらに「追加議定書」に加盟して核活動の透明性を高めることが義務づけられている。イランは「追加議定書」に署名はしたが、未批准だ。「追加議定書」を批准して完全に遵守するというなら再処理も濃縮も認めてよい筈だ。エルバラダイIAEA事務局長も同意見だ。6カ国側、とくに米国がイランのウラン濃縮も再処理も認めようとしないのは、過去に秘密開発に手を染めていた“前科”があり、中東第二の産油国が原子力平和利用を急ぎ、「核燃料サイクル」まで自前で確立する必然性がないと見ているからだ。米国にすれば、核弾頭製造以外に目的は考えられないということになるわけだ。
しかし最初からそう決めつけるのはいかがなものか。もとより100%の完璧は期しがたいが、「追加議定書」は、南ア、イラク、リビアなどにおける核開発をIAEAが見逃してしまった過去の苦い教訓から、核物質だけでなく、関連器材調達の事前申告、施設周辺の放射能環境モニタリング、無通告の抜き打ち査察などを導入しており、技術的精度はきわめて高く、IAEA査察官の監視を逃れて秘密開発を試みることはまず不可能だ。
「追加議定書」批准と履行がイランにとって踏み絵となる。イランがこれを拒否し、一足飛びにNPT脱退に進むようなら、その時こそ初めて安保理決議で制裁に踏み切ればよい。6カ国側は対決を急いではならない。とくに米国は安保理討議で中ロが制裁に反対するなら、イラク戦争と同じく「有志連合」方式で制裁を実施する意向と伝えられる。米国はいつも性急に事を運びすぎる。しかも米国は、NPT第6条の「核軍縮推進の義務」には全く関心を示さず、不拡散ばかり騒ぎ立て、イスラエルの核保有は黙認している。このダブルスタンダード(二重基準)が米国の信用を貶めている。
日本は今年末まで安保理で非常任理事国だ。北朝鮮「制裁」以外でも存在感を発揮して欲しい。イランは日本の中東原油輸入の14%を占め、日本が採掘権を獲得したアザデガン油田は中東でも最大規模だ。イラン制裁発動ともなると、この権益を失うことになろう。対決回避の知恵を出して行き詰まり打開に動く時だ。
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