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2006-09-04 00:00
自民党総裁選安倍候補の「解釈変更による集団的自衛権行使」は無理
角田 勝彦
前中部大学教授
9月1日、自民党総裁選の大本命、安倍官房長官は正式に立候補を表明するとともに政権構想「美しい国、日本」を明らかにした。谷垣財務相と麻生外相という他の候補との間にぶっちぎり的大差が見えている現在、金持ち喧嘩せず、相違点を目立たせずにさらに支持を集めようとの作戦からか、あるいは総理就任を前に余計な言質を与えまいとの考えからかは知らないが、政権構想は網羅的ながらA4で4頁と短く具体性に乏しい。あえて曖昧にしている感すらある。その一例として、集団的自衛権の問題がある。解釈変更による行使容認の問題である。
安倍自民党幹事長(当時)は、2004年1月18日のフジテレビ「報道2001」などで、自衛隊のイラク派遣に関連して「現行憲法でも集団的自衛権の行使は可能だ」との認識を表明した経緯がある。最近の著書「美しい国へ」でも行使を容認すべきとの見解を明らかにしている。今回の政権構想をめぐっても、一部に「憲法改正について、現行憲法のまま解釈変更により集団的自衛権の行使を容認したうえで、全面改正を目指す2段構えで臨む」との報道すらあった。
実際は、新時代にふさわしい憲法の制定や「世界とアジアのための日米同盟強化」、日米双方が「ともに汗をかく」体制確立は打ち出しながら、出馬記者会見では、「大変高いハードルがあり、そう簡単なことではない」と憲法改正の目標年次に触れず「まず国民投票法案の成立を目指す」、「日米同盟の機能を向上させるため個別具体的な例を検討し、それが典型的な集団的自衛権の行使にあたるかどうかを検討すべきだ」と慎重に対処した。
日米防衛協力の重要性は国民共通の認識になりつつある。周辺事態法、テロ特措法、イラク特措法などの進展もあった。米軍再編への合意もできた。7月の北朝鮮のテポドン2号(失敗)を含むミサイル連射は国民の危機意識を増幅し、ミサイル防衛(MD)構想への理解を深めた。技術的必要性からも米軍との一体化はさらに進展しよう。PKO協力法でも行動をともにしている他国の要員を守れるよう武器使用可能な範囲が拡大されている。
しかし、集団自衛権行使についての解釈変更は、これとは別次元の法的問題である。政府は「国際法上、権利を有しているのは当然だが、憲法9条の下で許容される自衛権の行使は、わが国防衛のための必要最小限の範囲にとどまるべきで、集団的自衛権を行使することは許されない」との解釈をとっている。「権利はあるが行使できないとする論理」はおかしいとの主張には、それこそまさに第9条の本旨であると答えるほかはなかろう。米国で自衛の先制攻撃論まで生まれたことなども勘案すべきであろう。
天権法理非といわれるように権力は法を超えることもあるが、憲法となると簡単にはいかない。法制局なども必死に抵抗しよう。次の選挙を控え国民の眼も光っている。自民党内にも異論がある。総裁選で安倍、麻生両候補の「容認論」に対し、谷垣候補は「正面から憲法改正により解決すべきだ」と主張している。安倍候補は論戦を避けるようである。
日米防衛協力には、集団的自衛権という重荷を背負い込まずとも、米軍再編、とくに普天間基地移転やMD(情報収集衛星・Xバンドレーダーを含む)などの重要懸案が山積している。神学論争より地道な努力こそ求められる。
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