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2011-06-14 00:00
(連載)中国の不動産バブルが崩壊するとき(2)
河東 哲夫
元外交官
インフレ(ソ連崩壊直後のようなハイパーインフレになるほどにはマネタリー・ベースは大きくなっていないが、それでも年間20~30%のインフレはあり得る)と雇用減少によって社会不安が増大し、社会主義的平等性への回帰を求める声が高まろう。そのような運動は、現在既に重慶で開始されている。配分を求める声は、外国資本に対しても、当局及び大衆の双方から、強く向けられる可能性がある。そのような情勢が現出すれば、来年の共産党大会は延期されるだろう(と言うか、いつまでたっても開催時期が発表されないだろう)。
間接投資が700億ドルの引き上げ、中国人自身による海外への資本逃避が1000億ドルに上るとすると、計1700億ドルの資本流出となる。だが、中国の外貨準備は2010年末で2.8兆ドルあるので、この面では中国自力での対処が可能であろう。しかし、GDPが大幅に低下して社会不安が発生した場合等は、どうするか?国際収支が大幅な赤字になるのでもなかろうから、IMF等による救済メニューでは意味がない。外資が中国での操業を続け、輸出を続けることが一番の救済策になるだろうが、そのためには治安、物流、金融等が確保される必要がある。中国経済が崩れた場合、それはどのような国際的影響を及ぼすだろうか?これを考えるには、「中国は多くの先進国にとって生産基地ではあるが、市場としてはまだこれからの存在であること」が基本となるのではないか? 例えば、ドイツは2009年輸出の4.5%を中国に向けているが、その対中貿易は大幅な赤字である(対中輸出と輸入は36:55のオーダー)。
日本にとって中国は輸出相手No.1であるが、その多くは最終製品よりも、中国で操業する日本企業向けの機械機器と中間財の輸出なので、工場を第3国に移転すれば代替が可能である。中国の不動産バブルが崩壊すると、中国ばかりか世界までが破滅しかねないような論調が見られるが、上記のとおり、それは先進国にとってはマネージ可能なものだろう。しかし、中国の政策は保守化し、外資への対応も厳しくなって、中国経済の成長はこれから長期にわたって鈍化し、配分をめぐる社会の緊張が継続することになるだろう。
リーマン・ブラザーズ金融危機で破綻を来たし、米経済の回復がならないうちに、中国の内需拡大がバックファイアーしたというのが基本的構図だが、これでは「開放」を認め、外資を導入することで富を築こうとしたとう小平の路線が否定されたように見える。もっと抽象的な言い方をするなら、現代中国は共産党の凝集力で急速な発展を遂げることができたが、利益配分が共産党とその関係者に偏在したために、内需不足を来たして破綻したのでないか。プラザ合意後の日本と同じく、中国も内需拡大が躓きの石となっている。(おわり)
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