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2011-06-17 00:00
小沢、求心力回復に懸命のグループ慰撫
杉浦 正章
政治評論家
「鳩が出た」結果大失敗に終わった6月2日の「内閣不信任の変」以来、小沢一郎の沈黙が続いている。永田町には「挫折感が大きすぎて、さすがの小沢も打ちのめされた」との見方が濃厚だが、筆者はそれもあるが、実態は「死んだふり」と見る。その証拠には、自宅や料理屋に中堅・若手議員らを招いて、連夜「慰撫工作」を展開、捲土重来の準備を整えつつあるのだ。小沢は首相・菅直人を「死に体」と見ており、ポスト菅の代表選に向けて牙を研いでいるのだろう。「一日も早く代わった方がいい」と野党も巻き込んだ「菅降ろし」を推進していた小沢は、2日の不信任本会議直前、「菅を退陣で説得した」という鳩山に、「署名させたか」と顔色を変えた。ベテランなら「だまされた」と一瞬にして分かる対応だったからだ。案の定、菅は、多くの議員が辞めると信じて否決に急転換したにもかかわらず、卑怯にもその否決を金科玉条として、居座りを続けている。
小沢が、前日の夜には70人を集めて気勢を上げ 、造反が80人に達して、不信任可決で「党分裂か、大連立か」という事態寸前での大逆転である。一致結束して行動できず、小沢の求心力は急落した。小沢グループの若手の中には「もう会合に出ない」と反発が生じ、小沢の増税反対・マニフェスト固執路線を「古い」と批判する声も高まり始めた。対応を迫られた小沢は、外向けには死んだふり作戦、内向けには求心力再構築に専念せざるを得なくなった。外相・岡田克也の不信任案欠席の事情聴取にも、おとなしく応じて、「韓信の股くぐり」をした。グループの若手・中堅には得意の飲み会での懐柔に出た。16日までの4日間で70人以上と飲んでいる。もっともその発言はオオカミ少年化を恐れてか、極めて当たり障りのない範囲にとどまっている。「みんなでいい代表を選ぼう」と述べるだけでは、まるで小学校の生徒会長選びだ。しかし側近らには「菅は最後の粘り腰で粘っているが、早晩退陣だ」と漏らしている。
依然として120人のグループを率いる小沢の動向が無視できないのは確かだ。菅と抱き合い心中するごとく悪あがきをしている国民新党代表・亀井静香は、非常識にも菅に内閣改造を勧めた後、「小沢一郎も納得する内閣を作らねばいかん」と述べて、小沢の気を引こうとしている。しかし、亀井もぼけた。小沢が「死に体」の菅に改造をやらせることなどまずあり得ない。せいぜい新設の「復興相」任命が精一杯だ。次期代表選候補の財務相・野田佳彦も、小沢を無視できない。「誰かから脱する、誰かを除くというのは不毛だ。一番超えなければいけないのは、怨念の政治だ」と述べ「脱小沢」見直しを表明している。小沢に秋波を送っているのだ。
小沢は野田については「増税でいくなら、支持は広がらないだろう」とけん制とも、アドバイスとも、とれる発言をするにとどまっている。グループ内に擁立論のある鹿野道彦には「昔、僕の下で何年間もやっていたなあ」などと言うだけで、支持には踏み込んでいない。こうして、ルーピー鳩山の愚行で崩れかけたグループの体制立て直しはかなり進んで、「再起動」へと動き出そうとしているのだろう。しかし、自ら自民党などに大連立をほのめかして、不信任案を提出させ、可決に導くことができなかった「信用失墜」は大きく、総じて小沢の地盤沈下は覆うべくもない。朝日の「かたえくぼ」欄の「20年必要 脱原発―ドイツ、脱小沢―日本」は傑作だが、実際には影響力は数年維持できればいいところだろう。
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