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2011-06-27 00:00
岡田は“菅退陣”を詰め切れていない
杉浦 正章
政治評論家
テレビの主要政治家のインタビューは録画して綿密にに聞き直してみないと真意が伝わらない。幹事長・岡田克也は6月24日の民放テレビ番組で「脱原発解散」を「夏の幽霊みたいなもので、常識的にないし、あってはならない」と一応は否定しているし、それが確かに常識だろう。しかし、放送を聞き直してみると、微妙なニュアンスが残っている。案の定26日には「解散は首相の大権」とその可能性を完全否定しなかった。首相・菅直人が“狂気の解散”に走り込むケースまでは、さすがに否定できないのだ。発言を分析すると、岡田は菅との調整で、再生可能エネルギーの買い取り法案の成否、第三次補正を編成する首相は誰か、脱原発解散の回避、の致命的な3点で、話が全く詰められていないことが分かる。菅を8月いっぱいで退陣させるには、まだひと山も、ふた山も越えなければなるまい。首相・菅直人の居座りで白紙に戻った与野党合意に当たって、岡田と菅が詰めたポイントは「再生エネ法案は国会において審議・採決する」と「第3次補正予算案の本格的編成は新体制で行う」の2点だ。
まず再生エネ法案だが、通常なら「成立させる」とするところを、「採決する」にとどめたのはなぜか。岡田は「否決されたらもう一回採決となると、次の国会まで政権が行ってしまう。通す努力はしなければならないが、成立まで首相が行うということではない」と、「採決さえすれば、成否に関わりなく退陣する」との見通しを述べた。「採決すれば、たとえ否決されても、菅の居座りはそれまで」と歯止めをかけたつもりなのであろう。しかし問題は、菅への歯止めがかかっているかどうかだ。菅の政治手法なら「採決したら、成立させるのが当然」と開き直りかねないからだ。「成立まではあなたは責任を持つ必要がない」と詰めていそうもない。そこが詰まっていないのでは「絵に描いたもち」にすぎない。次に「第3次補正予算案の本格編成は新体制で行う」であるが、菅がごねて「新内閣」を「新体制」に代えさせた、いわく付きの部分である。ここでも岡田は菅に対して「新体制とは次の首相なのですね」と詰めていない。従って菅は、「内閣改造で新体制を作って、3次補正の編成に当たる」という詭弁(きべん)を成り立たせることが出来るのだ。岡田自身が「首相が新内閣を新体制と言い換えた点に意味があるという人もいる。解釈に幅があるかも知れない」と、まるで他人事のように述べているが、実際にはこのクリティカルな部分があいまいでは歯止めになり得ないではないか。
次に菅側近や亀井静香が主張している「脱原発解散」だ。岡田は「誰も言っていない。うわさとして永田町に流れているが、そういった可能性はないと思っている」と否定している。しかし微妙な点を付け加えているのを見逃してはなるまい。「最後は総理大臣が決めることですよ。菅さんの頭の中までのぞいたわけではないので断言できないが、常識的にないし、あってはならないことだと思っている」と述べているのだ。この「常識的にない」が菅には通用しないことが、全ての問題の発生源となっているのであり、岡田はいわば希望的観測をしたに過ぎない。現に岡田は、26日になってテレビの司会者から「体を張って止めるか」とただされ、「総理の解散権を今から否定するわけにはいかない。総理が解散といえば出来る。そういう仕組みだ」と可能性に一歩踏み込んでいる。
こう見てくると、岡田は菅の延命に歯止めをほとんどかけ切っていないことが鮮明に浮かび上がるではないか。うやむやにして菅の“善意”にだけ期待しても、その“善意”のかけらもない菅には無駄だ。岡田自身も「まだ確認できない点もあり、もう一度確認できないか、自民、公明両党に提案したい」と述べているが、詰めが甘いのだ。キーポイントでの岡田の詰めの甘さが、菅の居座りの根源となっているのだ。自民党幹事長・石原伸晃が26日「震災を受けた東日本の人たちが、菅さんは気が狂って解散するのではないかと思っているような事態では、物事は進まない」と“狂気の解散”の可能性を指摘している通りだ。しかし岡田では、やり直しても、詰める力量はないだろう。政府・与党首脳は26日夜、岡田、参院議員会長・輿石東、官房長官・枝野幸男、官房副長官・仙谷由人らが鳩首協議し、8月末までの退陣で一致したが、誰が菅の首に鈴を付けるのか。犬の遠吠えを繰り返していても無意味だ。いかに菅を押さえ込むか。政権内部に問題と火だねは依然残っている。
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