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2011-06-27 00:00
三陸沖EEZ内における中国の海洋調査船による無断調査
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
6月23日に、中国の海洋調査船が、宮城県沖約330キロの我が国の排他的経済水域(EEZ)内において無断で採水調査を実施し、海保の巡視船による退去要請を受けてEEZ外に退去する、という事件があった。これに先立って、6月17日には『人民日報』が、福島第一原発の事故による日本近海の放射性物質による汚染状況を調査するために、海洋調査船が16日に出発したという、中国の国家海洋局副局長の談話を報じている。
本件における法的問題点は、無断で我が国のEEZ内で海洋調査を実施したことに尽きる。国連海洋法条約246条2項は、「他国は、沿岸国の同意を得た上で、そのEEZ内で科学的目的で調査を実施することができる」と定め、同3項では、「純粋に科学的目的で行われる調査については、原則として沿岸国は同意を与えなければならない」と定めている。さらに同5項では、「天然資源の探査・開発に直接影響を及ぼす可能性がある場合は、沿岸国は許可を与えないことができる」と定めているが、今回の中国の海洋調査はこれには該当しないであろう。したがって、海保の巡視船が中国の調査船を我が国EEZから退去させ、日本政府が中国政府に対して抗議したことは、必要最小限の対応をしたと言える。
ただ、法的には上に述べたような議論でよいとして、政治的には、それでは済まない。今回の中国側の行動の意図は、太平洋における中国のプレゼンス拡大を誇示するとともに、北回りで太平洋に抜けるルートの確保に向けた予備調査ではないか、という専門家の分析がある。また、6月8日から9日にかけて、中国海軍の駆逐艦やフリゲート艦からなる艦隊が沖縄本島と宮古島の間を通過して太平洋に出て、昨年4月と同規模かそれを上回る規模の演習を約2週間にわたって行ったが、今年はフィリピン東方沖まで到達しており、小笠原諸島からグアム島に至る「第二列島線」に対する示威行為の意味合いがあったとされる。このことと、三陸沖EEZ内での海洋調査をあわせて考えれば、中国の太平洋への進出圧力はいよいよ強烈なものとなった、と判断するのが当然である。これに対抗するには、まずは日米合同演習を活発に実施するのが最も効果的であろう。
東日本大震災を受けた米軍による「トモダチ作戦」は、我が国に対する同盟国としての友情の表明であり、人道的支援であったと同時に、我が国が震災対応に力を注ぐことによって「力の空白」が生じることを防ぐ意味もあった。「トモダチ作戦」で日米両軍が連携を強めたことは、我が国の安全保障にとって貴重な資産のはずだが、その後の政治空白により、その貴重な資産を空費してしまったように思われる。今般の、中国による海洋進出のさらなる活発化は、それを象徴する事件であると言えよう。繰り返しになるが、迅速に日米合同演習を太平洋の随所で実施する必要がある。そのためには、まずは我が国がまともな統治能力を回復することが大前提である。「国防軍」たる自衛隊が、いつ辞めるか分からない最高司令官に率いられているようでは、全く話にならない。
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