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2011-06-29 00:00
(連載)50年、100年先の日本像を考えてみたい(2)
吉田 重信
china watcher 研究所主幹
このような「知力がものを言う」世界の趨勢を意識して国家運営に努めているのは、米国であるが、ほかにも注目すべき国として、中国(台湾を含む)と韓国がある。とりわけ、中国と韓国は若い世代の人材育成に力を入れている。たとえば、宇宙開発技術やスーパーコンピュターなどの分野では、中国の技術はすでに日米に並ぶほど高く、また西洋音楽など芸術の分野でも、今や中国や韓国が日本を追い上げている。囲碁の分野では、日本のプロの代表でも、中韓台の選手には勝てない。このように、日中韓台の知的分野での「見えない競争」が激化していく形勢である。
そこで、筆者は、たとえば、以下のような国家的施策を提案したい。(1)日本のこれまでの「平和主義」と「国際協調主義」を徹底し、できるだけ多くの諸国との友好関係の整備、増進を図る。とくに、隣国である中国(含む台湾)と韓国との知的分野での互恵的協力を整備、強化することが肝要である。(2)このため、ODA予算や国際交流促進のための予算を一層充実する。(3)国際的に通用する人材を養成し、そのための教育を充実する。とくに、学術機関を強化し、国際化する。優秀な外国人を積極的に受け入れる。また、女性の能力をいっそう高め、その活用をはかる(日本女性の社会的進出度は極めて低く、韓国、台湾にも及ばない)。英語に加えて、中国語、韓国語を含む外国語教育を充実する。(4)ヨーロッパ諸国のように、国土の美化に腐心し、都市のみならず農村の景観を整備することによって、日本の観光立国化をはかる。脱原発を目指すのは当然である。(5)北欧諸国に倣って、軍事費を必要最小限に削減することによって、社会福祉制度を劣化させず、むしろ一層充実する。よって、国民の幸福度の高い国作りを目指す。
なお、近年日本で横行しているいわゆる「日本衰退論」について一言ふれたい。諸兆候からみて、今や日本が確実にかつての活力を失いつつあることは、紛れもない事実である。しかし、これまでの諸文明の例からみて、永遠の繁栄を誇った文明はない。むしろ、優れた文明は、衰退期を迎えたあとに、いかに長く生き延びていくかにおいて、真の実力を発揮するといわれている。たとえば、古代ローマ文明は、崩壊した後も、西ヨーロッパ文明やアメリカ文明のなかに生き残り、今日に至っている。
したがって、今後の日本の国家としてのあり方は、若さの活力ではなく、老熟した人間の知恵をもつ国家として、存続する道を模索すべきではないだろうか。停滞や衰退などといわれれば、気が滅入る。しかし、低成長ながら、着実に円熟し、省エネで効率のよい文明を目指す、というふうに考え方を転換してみたらどうだろう。ある意味では、江戸時代のような中世的落ち着きのある社会を構築しつつも、未来を目指す、つまり、back to the futureという心のもち方もありえるのではないか。江戸時代において、日本の文化と文明の程度は、一面では西欧のレベルを超えていた(例えば、識字率、教育熱心)というのが、世界学界の定説である。(おわり)
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