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2011-07-20 00:00
(連載)大震災後の復旧・復興をめぐる議論に望む(2)
橋本 宏
元駐シンガポール大使
この関連で、筆者は、わが国が中長期的に国際社会の中でヒト、モノ、カネを惹きつける魅力のある存在であり続けるために何をすべきかについて、国民レベルの議論の展開を提唱したい。例えば、この課題の一側面を外人観光客の激減という形で痛烈に経験している第3次産業従事の方々にとっては、「安心・安全社会の再構築」こそが喫緊の課題であろう。同時に指摘したいことは、わが国が中長期にわたってソトからヒトを惹きつけていくためには、外国人との間の壁を低くしていくための経済的、社会的、文化的諸問題の克服が極めて重要だということである。それにも拘わらず、そのための取り組みは遅れている。また、産業の空洞化問題については、今後日本に工場を留めるか、海外に移転するかは、民間企業の自主的判断に委ねられたままのように見えるが、これでは具合が悪い。政府全体として良好な国内ビジネス環境の整備に真剣に取り組んでいかなければならない。
TPP交渉(環太平洋経済連携交渉)については「交渉参加の検討を忘れた菅内閣」という批判がメデイアで報じられているが、日本のTPP交渉への参加に取って死活的に重要なのは、農業復興、農業再発展の在り方であるにもかかわらず、その課題については官民共に思考停止状態にあるように見える。
巨大な財政赤字是正問題については、日本国民の保有する十分な金融資産もあって、具体的な危機に陥らずに済んできているためか、今ひとつ政府の取り組みに真剣さが感じられない。また、わが国全体にとって貴重な財産になっている個人金融資産について、それを長期に保持し得る仕組み等について、議論を深めているようにも見えない。今次大震災を機に、国家地震再保険制度の見直し、原発賠償制度の在り方等については、今後議論が行われていくであろうが、既に巨大な財政赤字を抱える日本政府として、外国資本の活用をも視野に入れ、わが国に再保険市場を整備していくとか、将来の地震、津波、台風、火山爆発等による大規模災害再発に備え、外国資本を取り込んだ新たな官民協調の再保険制度を構築していく、といったような議論は聞こえて来ない。
こうした現状を考えると、大震災の復興と日本の再生を図る上で、如何にして、中長期にわたって日本の優位点(モノ作り、個人金融資産、伝統、文化等々)を長期にわたって存続させ、また相対的に弱い分野の実力を高めていくかについて、改めて国民的議論の展開を望みたい。その際、外国との競争を厭わず、また場合によっては、外国の力を積極的に活用して行く、ことが重要と考える、こうした議論を深めるためのキーワードは、「再び開国のススメ」である。(おわり)
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