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2011-07-21 00:00
「鶴の一声」でものごとが動くと錯覚している菅首相
河東 哲夫
元外交官
昔から、改革を志す者は、超法規的やり方で理想を実現しようとすることがある。ロシア革命しかり、そして民主主義を武力でイラクに広めようとしたブッシュしかりであったが、菅政権はどうであろうか。説得と手続きを欠いたまま素晴らしい案を花火のように打ち上げては、どれも失速させ、手垢にまみれさせてしまう。ムラの原理、つまり全員一致(コンセンサス)の原理でできている日本社会に、多数決原理を持ち込んで、斬新な決定ができるようにするのはいい。だが民主党が2年前に勝ち取った絶対多数は、その中身がばらばらだった。
小泉改革を自民党の守旧派が後戻りさせたことに怒った者、逆に小泉改革で医療補助金などが減って不満を持った者、そして戦後一貫して社会主義経済・反米の立場を持してきた旧社会党の人たちなどだ。現在の政権の政策は、そのような雑多な成り立ちの民主党の議席数を盾にとって、党内の同意すら得ていない政策を、つぎつぎと延命のために打ち上げては、撃ち落とされて、使い物にならなくしてしまったものだ。もういいから、政策に触らないでもらいたい。
ロシアのボルシェビキは、実際には少数派でありながら、多数派(ロシア語で「ボルシェビキ」)を名乗って、社会民主労働党内の権力を簒奪してしまった。そして2月革命後、国内の権力が空洞化したのにつけこんで、武装蜂起し、10月革命を成し遂げたのだ。つまり二重革命、まず党内で、次いで国家で権力を奪い取ったのだが、菅政権はそれを逆のコース、つまり「まず国家で、次いで党で」の順序でやろうとしている。TPPも、原発撤廃も、僕は賛成だ。だが菅政権ではそれはできないだろう。関係者、国民を説得し、利害を調整し、利益を失う者には正当な補償を用意し、そのための財源を見つけ、財源を作るために経済を生き返らせる。そういった手続きを全部欠いたまま、ただ「いいことなのだから、やれ」というだけでは、小学生と同じだ。
菅総理は、各界を説得し、利害を調整できるような人脈を持っていない(それを持っているのは小沢氏だろう)。だから、理屈の力で国民の支持をかきたて、総理の「鶴の一声」でそれを「実現しよう」、「実現できる」、「できないとしたら、官僚が抵抗しているからだ」という単純な構図で突っ走っているように見える。日本の憲法は、総理に「鶴の一声」の権限がある、などとは書いてない。三権分立の建前だ。独裁者の出現を防ぐためである。日本総理よりはるかに大きい権限を持っているアメリカの大統領でさえ、予算については議会の同意がなければ何もできない。憲法を外れた権力行使は、憲法に則って裁いてもらいたい。三権分立は、こういう時のためにある。
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