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2011-07-24 00:00
日本の人的資源開発は急務である
松井 啓
元駐カザフスタン大使
天然資源小国の日本にとっては、人的資源は最重要資源である。「人は石垣」という。明治維新後の日本の発展、また敗戦後の経済発展は、優れた人的資源によるものである。しかしながら、日本は米ソ二極構造崩壊後の流動的な世界、グローバル社会への対応に立ち遅れて、20年を失い、このままでは「失われた30年」となってしまう。日本の働き手(労働力人口)は、2010年には全人口の5割を切った。日本の資源・エネルギー自給率と食糧自給率は、先進国の中でも極端に低く、現状では農業、水産業などの第一次産業は、高齢化により更に衰退せざるを得ないであろう。中小企業でも、国内では若手労働者が確保できないとして、労働力が低廉で豊富な海外に転出する工場が出始めており、産業の空洞化が進んでいる。
他方、日本企業の競争力強化の鍵は優秀な人材の確保であり、収益向上に貢献する人材であれば、日本人にこだわる必要はないであろう。事業の国際化が進み、英語力、海外事情にも通じ、やる気と積極性、考える力を備えた外国人は重要な戦力となる。日本企業による外国人の大学新卒者の採用が進んでいけば、質の高い若い外国人の日本企業への参入は増加してこよう。OECD(経済協力開発機構)が2009年に世界15歳の生徒に実施した調査によれば、読解力、数学的応用力、科学的応用力の3分野とも上海、韓国、香港、シンガポールなどアジア勢が上位にランクされるという。アジアは日本企業にとって有望な人材供給源となり、このままでは日本企業の本社も、海外拠点も、幹部の多くがアジア系外国人で占められ、日本人が平社員という企業が増えることになりかねない。
グローバルな世界に対応できる「日本の人材」という商品の開発、優秀な人材育成が不可欠である。知識や能力が海外の学生に負けない優秀な学生を育成するにはどうするのか。企業経営の知識、ノウハウを身につける方途、大学などの基礎研究を強化し、質の高い理系(特にIT関連)人材の蓄積、大学、研究機関間の競争促進、内外の研究者の流動性、交流の活発化が必要である。
日本の大学は、平準化された草食動物的平社員養成機関となり下がって良いはずはない。文部科学省、大学・研究機関、経済産業界が一体となり、総合的長期的観点に立った学制、学期、補助金等の教育制度や予算の抜本的見直しをして、改善策を早急に実施していかなければ、発展しつつあるアジアの中で取り残されてしまうであろう。
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