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2011-07-26 00:00
(連載)橋本宏氏の原発事故損害の保険・再保険導入論に賛成する(1)
塩谷 隆英
経済調査会会長
7月19、20日付けの本欄に掲載された橋本宏氏の論文「大震災後の復旧・復興をめぐる議論に望む」を拝読しました。その結論部分で、外国資本の導入を前提とした「再保険」に着目したのは慧眼だと思います。TPPによる保険サービスに関する「開国」の一環として、我が国の地震、津波、台風、火山噴火等の自然災害の発生に備えた官民協調の再保険制度の構築を図り、外国保険資本の日本への進出に対応するという考え方は、傾聴に値するものだと思います。
今回の原発事故で明らかになったことは、日本の原発に対しては「保険」「再保険」の思想に十分裏打ちされた制度が欠如していたことです。ここに今日の混乱の原因があるような気がしてなりません。日本の原発の議論は、「事故は絶対に起こらない」という安全神話が崩壊すると、一気に脱原発の方向に雪崩を打って突き進んでしまいましたが、その前に、保険・再保険制度を充実させることによって、原発のリスクを相当程度カバーするとともに、原発の安全性確保のための技術革新を促すという議論が行われてしかるべきだと思います。そもそも、リスクゼロと考えれば、保険は成り立たないわけで、安全神話の下で保険の考え方が軽視されてしまったのではないでしょうか。現にスリーマイルやチェルノブイリの例を経験したわけですから、リスクはゼロではなく、それに対する保険、再保険が用意されていなければならなかったはずです。
もちろん、全く用意されなかったわけではなく、「原子力損害賠償法」(昭和36年法律第147号)では、「原子力損害賠償保険」も、それを超えた場合に政府が補償する「原子力損害補償契約」というスキームも、用意されていますが、保険でカバーする損害は、一事業所あたり1200億円以内に限定されていたのです。安全神話の下で損害額が過小に見積もられ、しかも、これを超える場合には政府が必要な援助を行うことになっている「親方日の丸」の制度の下では、リスクを保険でカバーするインセンティブが生ずるはずもありません。自民党も与党の時代にこれで済まして来てしまったために、追及の仕様がなく、与党もこの議論を避けて、脱原発という攻撃目標を設定して「市民運動的解決法」に走っているのではなかろうかと思います。
もし、今回の原発事故の損害が保険と再保険で十分カバーされていれば、これほど大問題にはならなかったでしょう。もっともその保険料が電力料金に転嫁されて、料金は上がっていたでしょうが、それにしてもリスクは全電力会社に分散され、さらに再保険制度が利用できれば、世界的規模でリスク分散されるわけですから、一電力会社にしてみれば、耐え難い料金水準にはならなかったと思います。私はこの分野に知識がないのですが、保険制度の発達しているアメリカなどでは、原発事故に対しても民間の保険会社の保険が成立して、それは世界的な再保険のシステムによってカバーされていると考えるのですが、いかがなものでしょうか。そうした海外の保険会社を利用することが出来れば、保険料も低く抑えることが可能になり、電力料金への転嫁も低く抑えられるかも知れません。(つづく)
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