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2011-07-27 00:00
解散を封ぜられ、「大手飛車詰め」を食らった菅
杉浦 正章
政治評論家
「解散しない」のではなく、「解散できない」情勢に立ち至ったのだ。首相・菅直人は解散権を封じられたのである。「脱原発解散」など、そもそも政局ど素人の側近が考え出して、菅が乗った「虚構の構図」にすぎなかったのだ。こうして、菅は解散権という首相の持つ“大権”の最たるものを失った。将棋で言えば「王手飛車を食らった」ことになり、必ず詰む「必死」がかかった状態になった。しかし、この棋士は、3手先が読めないで投了せず、無駄な「長考」に入るから困るのだ。脱原発にせよ、解散にせよ、大テーマを臆面もなく発言する菅に、不快感を覚える。まさに“不快菅”だ。その原因は、菅自身がレームダックだからである。レームダックが何を言っても、もはや国民は聞く耳を持たず、まだじたばたしているとしか感じない。だから世論調査でも8割が退陣を求めるのだ。
しかし、本人は、自分が勝負強いと思い込んでいるから、始末に負えない。過去に菅を救う“奇跡”とも言える事態が2度起きているからだ。一つは、外国人献金での退陣寸前に大震災が発生して虎口を逃れたこと。他の一つは、不信任案成立直前に「鳩」が飛び出て、窮地を脱したこと。これが菅に「2度あることは、3度ある」という「変な自信」をつけてしまっているのだ。外交で薄汚い究極の禁じ手を打ちそうになっているのが、その証拠だ。在職中にホステスにカードを渡して議員宿舎に出入りさせた元拉致問題相・中井洽が、中国・長春を訪れ、北朝鮮高官と接触していたのだ。菅と中井は、どちらが持ちかけたか知らないが、北から数人を取り戻すだけで喝采がわく、とでも思ったに違いない。しかしレームダックが外交をすべきでないのは、古今東西の常識となっている。相手に足元を見られて国益を損ずるからである。結局話はつぶれかかっているようだが、外交に活路を見いだすことだけはやめてもらいたい。
そこで「脱原発解散」だが、さる7月10日に、分かっているようで全く分かっていない評論家が、テレビで「菅さんは何が何でも脱原発で解散する腹を固めたとしか思えない」と断言したのに対し、菅は「まずやるべきことは、震災の復旧・復興と原子力事故の収束で、私はダブル選挙でいいと思っている。その段階で国民に判断してもらう時期が必ず来るので、『何が何でも早く解散』というのは、国民の気持ちとは、かなり離反している」と完全否定した。かねて筆者が「脱原発謝恩大解散など不可能だ」と分析したとおりである。もっとも、今度は2年後のダブル選挙を言い出しているから、またまた政界が「カチン」とくる。「2年後まで菅に言われたくない」からだ。支持率12.5%(時事)の首相には、いくらじたばたしても「脱原発解散」は無理だ。野党がテーマにさせないし、政権議席を維持したい民主党内がこぞって反対する。閣僚も閣議書に署名しない。だから冒頭指摘したように「菅は解散できない」のだ。
「できる」可能性があるのは、憲法上解散権が保証されているから、「破れかぶれの自爆解散」だけだが、これは狂気の政治行動であり、通常の分析範囲を超えている。したがって菅は解散権を事実上封ぜられたことになる。あとは、まな板に置かれた鯉にもかかわらず、飛び跳ねる菅を、いかに料理するかだが、菅の解散否定で状況は変わった。野党もいいかげん赤字国債発行法案を人質に取り続けることをやめるべきだ。人質で脅かしても、解散に追い込めなければ意味がないではないか。同法案がなくても、10月までやりくりできるという説があるが、成立を急がないと第3次補正や来年度予算案編成など重要日程に確実に支障を来す。ここは震災にあえぐ国民の状況を大局的におもんばかり、妥協すべきだ。妥協して菅退陣の条件を整えるしかあるまい。早期解散は新首相に迫るべきだ。材料は腐るほどある。
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