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2006-09-13 00:00
「中国病」へどう対応するか?
坂本 正弘
日本戦略研究フォーラム副理事長
かつて1970年頃、日本病(la maladie Japonaise)なる言葉が、フランスではやった。会社人間・日本人が禄に休暇も取らず、人生を楽しむすべも知らず、蟻のごとく働き、GNPを上げて、世界を忙しくしている状況を皮肉ったものだが、2006年の現在、私は、中国病(la maladie Chinoise)が、国際社会を汚染し、遙かに大きな規模で、世界文明を蝕んでいると主張したい。
中国病の第1は、各国政治家などへの招待外交、買収外交である。一番の被害は日本である。日本への招待外交、買収外交は長期にわたり、極めて巧妙に行われ、それが決定的な力を持っていることは、日中摩擦のたびに多くの政治家が北京詣でを行うことに示される。昨年以来の靖国摩擦の高まりは中国招待外交の罠の有効さを改めてあぶり出している感があるのはじつに遺憾である。しかし、かかる状況は、日本のみでない。米国でも、昨年は特に中国祭りなど、中国の招待外交が派手に展開され、中国ロビーは一段と活発になったが、逆に議会筋あたりから、中国外交への反発と警戒が強くなっているのである。
第2に、日本にとって忘れがたいのは、昨年の日本の国連常任理事国への立候補の際、日本が期待したアジア・アフリカ勢の支持票は無惨な結果に終わったが、その背景には、中国が経済便益を初めあらゆる手段を動員して、これらの諸国に日本への支持取り下げを迫ったためである。特に注目されたのは、アフリカ諸国などの実力者に援助と称して、豪邸などを送り、その見返りを求めたことである。中国は独裁国家であり、実力者を絞り、簡単に、巨額の援助を行い、その見返りを要求出来る体制を持っている。これは先進各国が討論を重ね、伝統的に積み上げた政府援助の理念や方策を大きく毒するやり方であるが、汚染は国際的に急激に拡大している。
第3に,中国はこのような援助として、道路などの構築物や豪邸を贈る時や、中国の在外公館を増改築するとき、中国から、多数の労働者・技術者を同伴するが、構築物の完成の後もこれら労働者を現地に棄民している。この政策は、それら労働者が現地で中国街を作るなどにより、中国人の海外移住促進の効果を持っているが、現地住民との摩擦を起こし、アフリカでは大きな問題となっている。中国人は現在、世界に流出し、ロシアなどで摩擦を起こしているが、今後、国際的な摩擦が高まることは必須であろう。
第4に、中国は一党支配の国として、政治と経済は不分離であり、経済・貿易を政治目的に使い、政治は経済に常に介入する。中国企業は石油会社はもちろん、電気機械などの会社も基本的に共産党支配であり、政経不分離の企業である。また、中国に進出の外国企業は種々の負担を受けるほか、政治的関与を受けるが、これは、特に日本や韓国、台湾企業などアジア系企業に対し、強い。台湾企業は台湾独立問題を、日本企業は靖国や歴史問題の関連で制約を受ける。
市場経済、自由貿易の原則は、西欧社会が、如何にして、政治の経済への介入を排除しようかと、数世紀をかけて、作り上げてきた原則であるが、中国はこの原則を大きく犯しており、中国が影響力を強めるにつけて、中国からの汚染は強くなろう。以上のような政治家などの招待・買収外交、援助と贈賄、市場経済原理への背反など、これまでも例がないわけでないが、中国の場合、極めて大規模、広範であり、その汚染も大きい。問題は、中国の体質からみればこのような汚染は当然のことであろうが、世界文明の流れ、市民社会の論理と衝突する。
中国は21世紀の大国とされる。しかし、中国社会を支える論理、イデオロギーは存在せず、また、現在の中国社会を鑑とする国は世界にない。かつてのソビエトが共産主義のイデオロギーを持ち、一時的にしろ、ソ連社会を世界のモデルにする動きがあったのとは大きく異なる。それでは中国の武器は何か?中国の歴史は漢民族による3千年の同化の歴史である。それは論理による説得では無く、アミーバーのように、他民族を中華民族に同化する能力であり、現在も、満州、内蒙古、新彊、チベットで進行している。世界人口の2割を越える人口、軍事力、更に経済力を利用して、地域覇権を目指すと共に、同化を進めている。このような流れは中国の体質からすれば当然かも知れないが、論理による交流を進める近代社会の流れからみれば中国病に映る。これまでも、国際社会は中国に対し、民主主義の浸透、人権の尊重、法の支配などを主張してきたが、上記のような中国病の弊害に鑑み、日本は米国や他の国と協力して、中国病の情報を集め、その改善のための方策について、国際社会の合意を高めることが、中国と世界の共存の上で必須のことと考える。
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