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2011-08-04 00:00
新党結成も視野に小沢が動き始めた
杉浦 正章
政治評論家
蛇の道は蛇というが、そのへびでも理解出来ないのが首相・菅直人の居座りだろう。小沢一郎が「すごい神経だ。まともな神経なら、とうに辞めている。逆に感心してしまう」とあきれている。筆者は先に、大震災と不信任否決の“奇跡”が菅にあらぬ自信をつけてしまったと看破したが、案の定菅は「絶体絶命だと思っていても、動いていれば、こっちに道が出来る。また動いていれば、またこっちに道が出来る」とうそぶいているようだ。そこには唯我独尊のおごりしかなく、そこいらの有象無象では閉塞状況を打開できない、と思い込んでいる。「くさびを以てくさびを抜き、毒を以て毒を制する」にはスーパーマンが必要なのだ。
そのスーパーマン小沢が、不信任案否決の“脳しんとう”から2か月目にして、ようやく覚めつつあるようだ。側近によると、今度は野党でなく民主党が不信任案を再上程して、菅退陣に結びつけるのだという。小沢は7月26日夜から3夜連続で、自らに近い衆院当選1回生でつくる「北辰会」メンバーと懇談、今後の戦略をほのめかしている。小沢は、菅の退陣問題について、「当面は見守る」としながらも、「民主党議員一人一人が決断しなければならないときが必ずくる。お盆がひとつの大きなターニングポイントになる」と述べている。これはお盆明けに最終戦争に臨む意思表示であろう。そして「辞めるなら結構だが、辞めないならば、民主党議員が意を決する時が来る」と勝負に出る意気込みを示した。それではどのような動きを小沢が考えているかだが、やはり最終決着は不信任案の再上程しかないと思っているようである。小沢は、7月28日の記者会見で「不信任案は提出者と理由が違えば、一事不再議に反するものではない。首相が辞めないのならば、民主党議員全員が深刻に考え、決断すべきだ」と述べている。これは自民党政調会長・石破茂の構想と全く一致する。要するに、「鳩」が出て失敗した6月2日の「不信任の変」以前に主張していたことを、再び繰り返し始めたのだ。
しかし、幹事長・岡田克也以下民主党執行部は、「菅降ろし」というポイントを外して、あらぬ方向にばかり専念しているように見える。その上国対委員長・安住淳にいたっては、小沢の不信任案再上程論に対して「私が国対委員長でいる限り、いかなることがあっても、慣例通り1国会で不信任案が2度議題に上ることはない。衆院議院運営委員会ではねつける」と言い切っている始末だ。主敵を前にして、法的根拠のない筋論を述べるようでは、菅の居座りに対処できるわけがない。まさにぐずぐず政党のぐず執行部であり、ライオンの動きをネズミが批判するようなものだ。小沢は不信任案再上程という「毒」を以て、菅という「毒」を制する動きをしようとしているのだ。小沢が「民主党議員が意を決する時が来る」と述べているのは、ぐず執行部が乗らない可能性があることをを織り込んでのことだ。6月2日のケースと同様に、新党結成も視野に入れての不信任案再上程なのである。小沢の知恵袋である元参院議員・平野貞夫がテレビで「想定外の事が起きる可能性がある」と漏らしているのだ。筆者も小沢の側近から「執行部が言うことを聞かなければ、独自行動を取る」と聞いている。
自民党との接触も活発化している。鳩山由紀夫と自民党の石原伸晃、伊吹文明の現・元幹事長との会談もあやしい。「不信任案」が話し合われないはずはない。8月22日から始まるお盆明けの会期末は、菅が退陣しない限り「不信任成立→解散」「不信任成立→総辞職」が焦点になりそうな気配だ。8月4日付朝日新聞によると、またまた菅は“禁じ手”を使おうとしている。宿敵とみなす経産省の事務次官以下を更迭しようとしているというのだ。しかし、政府の最重要人事を、退陣間際の首相が辞任間際の経産相・海江田万里を使ってやることではない。しかも感情論に根ざした露骨な報復人事だ。海江田が言われるままというのも、相変わらずおかしい。原発事故に関しては、菅の対応が全ての混乱の根源であり、責任を取るのはまず自分であることを忘れている。本末転倒とはまさにこのことだ。菅は捨てておくと何をしでかすか分からない異常心理の段階に入ってきた。
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