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2011-08-05 00:00
(連載)ノルウェーでのテロ事件と日本 (2)
水口 章
敬愛大学国際学部教授
もちろん、その目的を爆弾テロと銃乱射という方法で追って達成できるわけではない。しかし、この衝撃的な事件によって、外国人移民問題が抱える(1)宗教と民主主義の関係、(2)多文化主義の矛盾など、問題の本質ともいえる要素について、一般市民が考えるようになるだろう。一方、この事件を契機に治安関係機関の強化、監視カメラの設置、インターネット内のチェック、武器・薬品類の販売管理などが進む可能性があり、極右によるテロ、イスラム過激派によるテロなどの予防強化が図られることも考えられる。
ノルウェーのテロ事件が、遠く離れた日本に投げかけたものは、周囲の大きな社会変化に対応するため自らの社会を急激に変えると、その反作用が起きる可能性があるということである。日本の「近代化思想」を研究した山本新は、日本思想の潮流に「欧化と国粋」がサイクルになって社会に表れていることを見出した。
日本では1990年代のグローバル化の中で、外向き志向で構造改革、規制緩和が進められてきた。しかし、現在、地域性や歴史に根付いたあり方を模索する内向き志向が増えているように思う。日本社会では、ブレイビク容疑者のような過激な行動に出る人物は少ないと思う。しかし、出てこないとも断定できない。
われわれ一人一人が認識すべきは、われわれが生きている「生活環境」も常に動的バランスの中にあり、思考も外向き、内向きの動的バランスをとっていくことが大切だということだ。観点を固定化することは避けるべきだと考える。かつて、日本軍は「統帥権」を盾に「国粋」思考で日本人を戦争に巻き込んでいった。その時代を生き、語れる人たちは少なくなってきている。だからこそ、この日本の苦い経験を先人の大切な贈り物として記憶にとどめておく必要がある。 (おわり)
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