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2011-08-07 00:00
北方領土は、大局的長期的観点からの国民合意形成が先決(再論)
松井 啓
元駐カザフスタン大使
昨年12月9日の本欄への投稿「北方領土返還のためには、ます国民的合意形成が先決」において「大局的長期的国益の観点からの国民的合意形成が固まらないままに、拙速で特定政党や個人が、その成果を得ようと交渉を開始することは避けるべし」と書いたところであるが、再度この点を強調したい。
北方領土はロシアにとって戦略的に重要な位置にあり(本年2月28日拙稿「北方領土を考えるもう一つの視点」参照)、更に水産資源開発や海底資源開発の拠点としても重要となってきている。ロシア(ソ連)は広島、長崎への核爆弾投下後に日本に宣戦布告し(勿論国際法違反である)、この4島を占領して日本人住民を全て放逐しているので、領土の帰属問題でよく使われる住民投票は、日本にとっては意味がない。旧住民は老齢化しているので「時はロシアに味方」しているように見えるが、これまでの二国間の諸条約(1855年日露通交条約や1875年の樺太千島交換条約等)が消滅するはずもなく、焦る必要は全くない。
「北方領土問題」は、基本的にはこの4島の領有を巡る日本とロシアの二国間問題であり、かつて国連や先進国サミットでも議題として提出したことがあるが、このような国際的場で解決される問題でないことは判明している。アメリカ(ポツダム宣言、サンフランシスコ平和条約)や中国(尖閣諸島)、韓国(竹島)が関心を寄せているが、関係国が多くなるほど解決は難しくなるので、まず、この問題に第三国が関与することを極力避けるべきであり、ロシア、中国、韓国、北朝鮮が談合、結託をしないよう分断しなければならない。
次に、北方領土と周辺海域での経済、資源、観光開発等についての日本の対処振りを、長期的な国益の観点から、産・官・学の間の充分な論議に基づいて、堅固な国民的合意を形成することが必要である。かつて日本政府は「政経不可分」(領土問題の進展なくして、経済関係の発展なし)を主張していたが、次には「政経は車の両輪」(領土問題も経済問題も同時に進める。経済関係の発展は領土問題解決を促進する)に移り、現在は「政経分離」のようにも見えるが、この先「領土問題置き去り、経済関係推進」に移行していくのか、それとも何らかの条件設定をするのか、法律論、尊厳論、経済的利益論について議論を尽くす必要がある。また、「領土問題」としてではなく、「不明確であった国境線」の確定問題(航行、基地、住民問題等は後刻解決)としてロシアと議論する方法もあろう。
繰り返しになるが、ロシアは日本の政局が混乱している時に行われる個人的な点数稼ぎや自己売名的言動は歯牙にも懸けないどころか、付け入る隙を伺う好機と見るであろう。この際は、軽挙盲動せず、政局の安定を待ち、国民的合意形成に努め、ひたすら日本にとっての好機(ロシアにとっては妥協せざるを得ない状況)を待つのみである。
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