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2011-08-11 00:00
(連載)「脱原発」論を考える(2)
角田 勝彦
団体役員
この菅首相の「脱原発依存」方針は、国民の支持を得ている。前記読売世論調査では「賛成」67%、「反対」21%だった。朝日世論調査では「評価する」が61%、「評価しない」は27%だった。さらに菅首相の次の首相も、原発に依存しない社会をめざす姿勢を「引き継いだ方がよい」との意見が68%に達し、「引き継がない方がよい」という人は16%にとどまった。東日本大震災の被害(一応17兆円)を過小視するものではないし、人的被害の前には言う言葉もないが、筆者が本欄への「大震災後の日本と世界: 悲観論には組みせず」(5月16/17/18日寄稿)で論じたとおり、東日本大震災の影響は限られている。日本を襲う天災だけに絞っても、東海地震(とくに東南海、南海地震と連動した場合)及び首都直下型地震は、人的にも、物質的にも、さらに大きな被害をもたらす可能性がある。
これに対し、「脱原発」論争の結論は、経済社会面のみならず、背後にある日本と世界のあるべき姿への考察に大きな影響を及ぼすであろう。以下、簡単に私見を提示する。なお、福島第1原発事故のあとマスコミなどで吹き荒れている原発排除の嵐のためか、少なくともあるていどの時間をかけての「脱原発」論は、一般に受け入れられたようであるが、スリーマイルやチェルノブイリの惨事を経験したあとでも米露が原発を推進しているように、日本が脱原発に踏み切ると決まったわけではない。要するに、資源小国の日本が、必要な量のエネルギー(電力)を、安定して、できるだけ安価に、国内に供給するために、利用停止を含め原発をどのように利用していくかという問題である。原発輸出による経済的効果も考慮し得る。世界株安が進み、円高から景気への懸念が強い現在、産業への配慮は重要である。
菅首相は、7月13日、「2030年に原子力の発電比率(現在約30%)を53%に高める」とした2010年6月閣議決定のエネルギー基本計画を白紙撤回した。次の内閣で再検討が行われよう。具体的な今夏や今冬の電力供給不足懸念に、菅首相は「ピーク時の節電あるいは自家発電の活用などで十分対応できる」と言い切ったが、「埋蔵電力」なるものは、彼の幻想だった。量の次に、石油ショックの例を見ても、安定供給が重要になる。ウラン資源も限度がある。高速増殖原型炉「もんじゅ」が開発されてきたゆえんであるが、8月8日、菅首相は「もんじゅ」について廃炉も含めて検討すべきだとの認識を示した。コストについては、各エネルギーについて自画自賛の計算(勝手な政府補助計算を含む)が多いが、結局必要な技術をどう確保するかである。代替エネルギーと省エネルギー技術の開発に努めても市場が原子力に流れてきた現実は無視できない。
第1に、地球環境問題がある。地球温暖化回避にはエネルギーの脱炭素化が必要である。日本の総発電量のうち再生可能エネルギー(太陽光熱、風力、バイオなど)は僅か1%で、水力を加算した自然エネルギーでやっと10%である。日本は京都議定書の締約国であり、2020年までに温室効果ガスの排出量を1990年比25%削減することを国際的に宣言しており、原子力利用の急増でこれを達成しようとしていた。エネルギー基本計画がそれである。「脱原発依存」の方針をとる場合、この目標達成の見込みはない。(つづく)
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