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2011-08-14 00:00
生産基地から消費市場へと変わる中国経済の位置づけ
河東 哲夫
元外交官
出来て間もないキャノン・グローバル戦略研究所の研究主幹・瀬口清之氏が、7月下旬に北京・上海に出張し、その印象を「中国経済の現状、日本企業の対中投資動向等」と題してサイトにアップしている。日銀出身の人で、北京の事務所長も務めているから、中国経済のプロだ。僕には、いくつかの点でものすごく面白かったので、紹介してみたい。
一つは、中国における賃金水準が上昇し、邦人企業においても、中国人幹部の給料が日本人駐在社員の給料水準を抜くのはあと数年だと思われていること。二つは、賃金水準上昇、元レート上昇によって、中国は米国への輸出基地としての魅力を随分失い、最近の日本企業による対中投資も、中国市場での販売、拡販のためのものが増えているということで、これだけなら知っていたのだが、中国市場においては Made in Japan への信頼感が強いということと合わせると、中国国内市場向けについても、日本で生産して輸出する方がいいものも随分あるだろう、ということに気がついたことだ。
さらに、このレポートで指摘しているのが、日本企業の中で最近、先端的製品生産のための工場を中国に建てるのを殊更避けた例が相次いだことが、中国当局者にショックを与えているということがある。中国は知的所有権をぞんざいに扱うので、賃金水準が上がった今は、輸出用の生産場所としては、韓国、台湾、シンガポールあたりにはかなわない面が出てきたということだ。
もちろん、以上はまだ一部の事象だが、これから言えることは「中国への投資が日本産業の空洞化を招くのを心配しなければならない時代が終わりつつある。中国経済が伸びれば日本からの消費財の対中輸出も増える。そういう時代になってきたのではないか」ということだ。日本でモノづくりの復活と言っても、勤労年齢人口が減少し、理科系の人気が落ちて久しい今では、それほど簡単ではあるまい。そこは老齢者の活用、女性工員の増加、限定的な移民増加で手当てしていかないと駄目だと思うが。
アメリカへの輸出のためには、フォルクスワーゲンがアメリカ南部のチャッタヌーガ工場を拡張するように、アメリカ国内、または日産やホンダがやっているようにメキシコや他の中南米諸国で作ればいいのだ。そして中国は輸出のための生産基地としてよりは、日本製品の市場として見ていく。これまでもそうだったが、中国経済の成長が日本経済にとってもプラスとなる度合いが、これからもっと大きくなるということだろうと思う。
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