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2011-08-22 00:00
第2幕を迎えつつある中東の政治変動
水口 章
敬愛大学国際学部教授
「アラブの春」に関係し、リビア、シリア、イエメンで注目される動きがあった。まず、リビア情勢であるが、以前このブログで注目点として取り上げたことのあるトリポリから西に53kmに位置しチュニジアからの物流拠点となるザウィアが、反政府勢力のコントロール下に入った。今後のポイントは、(1)トリポリ包囲網が狭まる中、チュニジアで行われているカダフィー政権と反体制勢力との交渉の行方、(2)トリポリ市内の反体制勢力の動向である。
次に、シリア情勢では、国連においてロシア、中国、ブラジルなどがシリア問題の解決に慎重な態度を示す中、8月22日に国連人権理事会でシリア問題が協議されることになった。現在のところ軍事力使用も含め国際介入については、国連において検討テーマにさえ上がっていない。したがって、欧米諸国が人権理事会を通じて国際刑事裁判を使い、シリア市民を守る手段を見出せるか否かが重要ポイントとなる。なお、8月18日のCNNは、アサド政権は国連事務総長に電話で、軍や警察の作戦行動は中止されたと述べたとされているが、真偽は不明だと報じている。
そして、イエメンでの注目される動きであるが、8月18日、サーレハ大統領がイエメンに帰国する意思を明らかにした。同大統領はさらに、政権交代は選挙によるものであるべきとも述べた。これにより、即時退任の意思がないことを示したことになる。一方、反対勢力は17日、新体制樹立を視野に入れた全国規模の革命評議会(メンバー143人)の設立を発表した。同評議会は、近く議長と執行部(20人)を選出するとしている。そして、同組織がイエメンを代表するものであることの承認を国際社会に求める活動方針を示している。
以上の3カ国の共通点として、(1)反体制は勢力の統一性が弱い、(2)政変後の国の安定性に不安があることが挙げられる。そして、(2)による影響として、リビア関連ではエネルギー問題、シリア関連では中東和平問題、イエメン関連では国際テロ組織問題といった国際的リスクに結びつく恐れがある。今年初めより国際社会の注目を集めてきた「アラブの春」と形容されたチュニジア、エジプトの政変に続くアラブ諸国の政治変動は、政権交代第2幕に入りつつあるといえそうだ。
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