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2006-09-17 00:00
再び「解釈改憲は無理」について
角田勝彦
団体役員
9月4日付の本欄拙稿に関し、小笠原高雪氏の有益なコメントを頂いた。また寄稿後、「解釈変更による集団的自衛権行使は無理」との主張関連でも、「原理だけで言えば、憲法解釈を首相の判断で変えることはできる」(田中明彦東大教授9月5日付日本経済新聞)とか「少なくとも集団的自衛権(を行使する場合)については今の憲法とは矛盾している(改憲必要論)」(御手洗冨士夫日本経団連会長9月12日付朝日新聞)とか、さまざまな論評が見受けられた。そこで4日付寄稿を少し補足したい。
9月11日の日本記者クラブ主催公開討論会で、安倍自民党総裁候補は「公海上で日本と米国の艦船がパトロールしていて(その最中に)米国が攻撃されても、日本は手出しできない。これを研究してみることすらいけないのか」旨述べた。持論の憲法改正(「5年近く」かかるのを覚悟している由)や解釈改憲でなく、これまで集団的自衛権の行使に当たるとして自衛隊に禁じられてきたこのような具体的事例を、合憲である個別的自衛権の行使に再分類することで可能とする便法(第3の道)をとろうとしたものと見られている。麻生候補も谷垣候補も研究には異存ないようである。周辺事態法、テロ特措法やイラク特措法の際取り上げられたと同様の「矛盾」について防衛体制の神学論議が再燃することになろう。ただの神学論議は意味がないから、8月末に自民党国防部会防衛政策検討小委員会がまとめた「自衛隊の海外派遣に関する恒久法案」の検討などがきっかけになろうか。
「後方」とか「正当防衛」とか「破壊措置(MDに関する自衛隊法制)」とかで処理しようとする現行法制に対しては、ごまかしや屁理屈との批判が絶えない。自衛隊自体についても同じ批判が繰り返されてきたのは周知の事実である。しかし法は理に優越する。法については法制局の審査がある。国会の審議がある。裁判所もある。政治家や学者や有識者はもちろん、「現役の官僚」でも、「法」批判の「理」を主張しても通らない。麻生候補のように相互防衛は常識だから集団的自衛権は行使できるよう考えるべきと言うのは、ひとつの「理」ではあるが、それだけである。将来、有識者会議がどんな結論を出すにせよ同じであろう。米国の一部にある相互防衛期待論は、希望として聴けばいい。法制局の上にある総理ですら限界がある。就任当初、解釈改憲に意欲をにじませ、平成16年2月の衆院予算委員会で「(憲法を)改正しないのであれば、解釈を変更するのもいい」と述べた小泉総理も、わずか17日後の参院本会議で「便宜的解釈変更でなく、憲法改正を議論するのが筋だ」と前言を撤回し、それ以降は解釈改憲を諦めたようである。
さて、個別的自衛権と武力行使による相互防衛を認める集団的自衛権の間には国際法上も溝がある。国連は、相互防衛同盟がかえって戦争を生む原因になったとの考えから、当初(個別的)自衛権と集団安全保障体制で平和を維持しようとしたが、米州での同盟との関連から、集団的自衛権を認めた。現行日本国憲法下、集団的自衛権の行使が許されない(政府解釈)以上、いくら「地道な努力」をしても個別的自衛権の枠は越えられない。日米安保条約に「再定義」とか「再確認」とかを行っても限界があるのは当然である。なお、その限界の中で、日米安保体制は、米国から一般に高い評価をうけている。9月発射に成功した3基目の情報収集衛星のようなハードを含む「地道な努力」のたまものである。
小笠原氏の「現役の政治家」の考えを知りたいとの意見に私も賛同する。安全保障は国の大事である。憲法改正につながるとなると、なおさらである。最近ブッシュ米大統領は安全保障を中間選挙の中心的争点にする旨明らかにした。日本でも自民党の考えはかなり明確になった。他方、9月12日民主党代表に無投票で再選された小沢一郎氏は、憲法改正について、国民は関心がないから来年夏の参院選の争点にはしないとの考えを示した。責任野党として、民主党の集団的自衛権関係の政策は明確に表明されるべきである。「俺についてこい」は認められない。社民党は2月の党大会で、自衛隊は「違憲状態」との宣言を採択したが、「状態」とは何かを明確に示すべきであろう。「何でも反対」では通用しない。
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