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2011-09-20 00:00
野田首相の就任後初の外遊の成果に期待する
角田 勝彦
団体役員
野田佳彦首相は、9月20日夜から24日夜まで、就任後初の外遊を行い、21日午後のオバマ大統領との初の日米首脳会談、「原発の安全性と核の安全保障に関するハイレベル会合」(22日午前)に引き続き、23日午後の国連総会での一般討論演説を行う。韓国の李明博(イミョンバク)大統領とも会談する。東日本大震災に際する各国の支援への謝意表明に加え、日米同盟、円高やTPPを含む経済対策、原発などが取り上げられよう。すべて越し難いハードルである。
とくに日米関係の改善・強化のためには、首相の英断による一歩前進に期待する声が多いが、英断はお人柄ではなく、そもそも例えれば片腕重傷といえる被害を受けた日本にとり、無理は禁物である。結局は出来なくなることを約束すれば人格が疑われる。今回の会談や演説では、とにかく説明を尽くし、理解を求め、日本の相互協力の姿勢を信じさせることが重要である。先方が野田首相、つまり日本の誠意に納得すれば、今後の交渉が悪く行くことはあるまい。オバマも国内経済では3兆ドル追加赤字削減案が示すように悩みが大きい。野田首相が国内農業への配慮からTPPなどで突っ込んだ発言をできなくても、それなりの理解はあろう。とにかく世界経済のためにも日本経済再生は急務であるが、国の支援や住民の合意が進まないため、大震災から半年たっても被害が大きかった岩手、宮城、福島の沿岸部31市町村のうち復興計画策定済みは4市町にとどまる状態なのである、
日米首脳会談で焦点の米軍普天間飛行場移設問題では、19日玄葉外相がクリントン米国務長官とニューヨーク市内で初めて会談した際、「名護市辺野古へ県内移設を追及する」とした日米合意を推進する方針を確認した。沖縄県の仲井真弘多知事はその朝ワシントンの講演で県外移設を要求したばかりで、首脳会談でも県内移設推進が確認されるに留まろう。首相は日米同盟をわが外交・安全保障関係の基軸としており、前原民主党政調会長は7日訪米中のワシントン講演で、自衛隊の国連平和維持活動(PKO)で、行動を共にする他国の部隊が攻撃された場合の武器使用基準の緩和と武器輸出3原則見直しの必要性を主張しているが、党内に異論があり、首脳会談のテーマとはならないだろう。
原子力安全に関するハイレベル会合や国連総会演説関係部分では、福島原発事故の原因について、事故原因を徹底検証し、結果の国際社会への全面開示を約束する。原発の安全性を最高水準に高めるとしつつ、ただちに脱原発依存へ移行しない立場を明確にする。また、原発設備へのテロ攻撃は深刻な事態をもたらすと指摘し、核物質や原子力施設の防護・保全を図る核セキュリティーに取り組む決意を表明する。細野原発相が19日、ウィーンでの国際原子力機関(IAEA)年次総会演説で、福島第一原発の事故収束に向けた工程表について、原子炉を冷温停止状態とする「ステップ2」の達成期限をこれまでの「来年1月中旬」から「年内」に前倒しする考えを表明したことと相俟って、我が国の努力は評価されよう。細野氏はさらに、福島の教訓を生かした国際協力で日本が貢献する姿勢を強く打ち出し、原子力安全規制にかかわる人材育成機関として「国際原子力安全研修院」の設立を検討していることも明らかにした。
国連総会の一般討論演説は、大震災や原発事故を抱える日本経済に対する先行き懸念を払拭するのが狙いで、首相は日本経済の立て直し、円高による産業空洞化や財政悪化の克服へ大胆な施策を打ち出すと発表する方針である。懸案の南スーダン国連平和維持活動(PKO)への陸自施設部隊の派遣が検討される旨、国際貢献への積極姿勢もアピールされよう。派手さはなくても、野田首相の言動が「誠意あるもの」と国際的に正当に受け止められることを期待する。
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