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2006-09-21 00:00
アジアとの距離を縮める
鵜野公郎
慶應義塾大学名誉教授
小泉政権は靖国参拝によって日中関係を損なったという見方があるが果たしてそうか。例えば北朝鮮のミサイルへの日米の対応策は、中国から見ればその影響が台湾海峡に及んでくると見えるであろう。朝鮮半島では南の北への融合がある中で、北は核兵器を整えミサイル発射能力をもつとなると、日本はそれに対応するため日本海にミサイル迎撃艦を配置する決断をするし、アメリカもミサイル迎撃艦を配置する。責任ある政府としては当然のことといわざるをえない。別の例では、エネルギーがある。中国の急速な経済成長は日本にも大きな恩恵をもたらしているが、エネルギー需要も急拡大せざるをえない。世界的にみてエネルギー供給国は限りがあるので、エネルギー供給をめぐって日本とライバル関係が生ずることは避けられそうもない。中国は日本との領海周辺でのエネルギー資源の探索・生産にも躊躇を見せていない。中国・朝鮮半島との関係は緊張が高まる要因を抱えている。
ASEANは10カ国に拡大しているが、経済構造が類似した国の連合であるので、垂直的な関係が可能な日本との関係深化(ASEAN+1)が双方から求められる。同時に、ASEANと中国、ASEANと韓国とはそれぞれFTAに見られるように関係深化を実現してきている。これを進めてASEANと日中韓(ASEAN+3)が連合することが経済的に望ましいとしても、政治的には上記の状況を克服ないし迂回することが前提となる。さらにオーストラリア、ニュージーランド、インドを加える構想(ASEAN+3+3)もある。これには実体があり中国の影響力を薄めるためと考えるべきではない。米国も太平洋国家を任じておりアジアとの関係は重要である。しからば米国もメンバーであるAPECはどうか。環太平洋諸国がメンバーである上、ロシアもメンバーである。メンバー間の関係の密度はまちまちであり、ASEAN、ASEAN+1、+3、+3+3のような実体が伴わない感が否めない。アジア版のOECDを形成する構想も打ち出されているが、国情が多様なこの地域にあっては、加盟の要件をクリアーした国をメンバーにするOECD方式ではなく、多様性を含んだまま漸進する方式が現実的であろう。政策情報の共有化が第1歩とならざるを得ず、実体面まで踏み込むには無理がある。
日本はアジア・太平洋諸国とは2国間では経済的にも政治的にも文化的にも既に密接な関係を築いている。これは日本にとっては資産である。他のどの国をとってもこのような立場の国はない。他方、途上国を多く抱えるこの地域の声は国際コミュニテイーに届きにくいという実態がある。日本の責務は大きい。「アジアとの距離を縮める」には、統合の進展が期待されるASEANとの関係強化に加えて、2国間の公的関係を超え企業の枠を超えて地域的な広がりをもつ「シンクタンク連合」や「大学連合」など横断的かつ開かれた場を形成し、情報発信機能を強化することから始めるべきであろう。
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