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2011-09-23 00:00
(連載)パレスチナ自治政府の国連加盟問題(2)
水口 章
敬愛大学国際学部教授
例えば、日本が経済協力の対象として1993年以降パレスチナ自治政府に11.9億ドルの支援をしているのは、同政府の国家建設の中長期的な取り組みを評価しているからである。裏を返せば、本来、単なる自治政府であるパレスチナは日本の政府開発援助の対象とはならないのであるが、原則に反し支援し続けているのは、その意味があるからだといえる。仮に、米国などの主張どおりパレスチナ自治政府の国家としての加盟を否定すれば、日本をはじめとする各国は、そのパレスチナ支援政策を自ら否定するという矛盾を生じるのではないだろうか。
また、パレスチナの人々にとって国家承認は別のメリットももたらす。イスラエルは、パレスチナ自治地域に対し国際赤十字をはじめ国際機関の関与を阻害している。このことは、イスラエルが同自治地域を占領地であると認識していることの証だといえる。そうであれば、国際法で定められているように、入植行為のような著しく現状が変更される行動や、人権侵害となる軍事行動に対し、国際社会は厳しく批判すべきであるが、現実はそうではない。パレスチナが国家として承認されることで、国際司法裁判所や国際刑事裁判所を通じて、こうしたことも改善されることになるだろう。
この問題を巡り、米政権は苦しい立場にある。オバマ大統領は来年秋の大統領選での苦戦が伝えられており、米国内のユダヤ人組織の取り込みは大きな課題となっている。このような米国の国内事情とは関係なく、国連加盟193カ国のうち既に126カ国がパレスチナ自治政府の国連加盟に賛成するのではないかとの票読み報道がなされている(総会の3分の2は129カ国)。
果たして、日本はどのような選択をするのだろうか。日本の民主党政権は、党としての基本的対外政策がない。したがって、現政権はエネルギー政策を重視したアラブ寄りの外交か、増分的な米国追随外交政策か、といった選択肢を考え、短期的視野で外交の意思決定をする恐れがある。今回のアッバス・パレスチナ自治政府大統領の政策は、加盟承認が得られなくとも、パレスチナ自治政府を国連内で「国家」として認識させることが最低限の目的である。日本としては、この点を十分吟味して、合理的思考で国際協調と国益のバランスを取りつつ政策決定をすべきだといえる。(おわり)
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