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2011-09-27 00:00
アフガニスタンにおける米軍「夜間襲撃」の実態
川上 高司
拓殖大学教授
オバマ大統領が最高司令官に就任して以来、アフガニスタンでは特殊部隊による「夜間襲撃」、パキスタンではCIAの無人爆撃機drone による空爆が行われている。そして最近ではイエメンへの空爆が加速している。オバマ大統領の「テロとの戦い」は、少数精鋭によるピンポイントの秘密作戦が主流となりつつある。これは、国防費の削減と歩調をあわせるかのように、その回数が増えつつある。ピンポイントな襲撃なら、自国兵の犠牲もなく、また一般市民のまきぞえを回避できるので、効果的であるというのが、政権側の言い分である。
確かにアルカイダという、これまでの戦闘方法では対処できない「ボーダーレスで前線のない敵」との戦いでは、新しい戦略が必要なのであろう。しかし、オバマ政権が手放しで賞賛するように「夜間襲撃」や「無人爆撃機」は効果的なのだろうか。また国際法上の問題もはらんでいることは確かだ。米軍のヘリコプターが墜落し、SEAL 隊員22人を含む38人が死亡するという最悪の事故が起こったが、彼らは「夜間襲撃」に向かう途上だった。この事実によって、アフガニスタンでは「夜間襲撃」がひんぱんにおこなわれているという実態が暴露されたのである。その実態は、9月19日にNGOの「オープン・ソサイアティ財団」が発表した「The Cost of Kill/Capture:Impact of the Night Raid Surge on Afghan Civilians」が詳しくレポートしている。
レポートによるとISAFおよび米軍の夜間襲撃(Night Raid)は2009年2月から2010年12月の間で5倍になった。特に2010年12月から2011年2月のわずか3ヶ月の間には1700回の「夜間襲撃」が実施された。つまり、平均すればアフガニスタン各地で一晩に19回の「夜間襲撃」が行われていたことになる。人口わずか3000万人に対して一晩で19回の襲撃というのは、明らかに普通ではない。夜間襲撃とは、たとえばタリバンに食事を提供した家庭を、ISAF の少数部隊が深夜に襲撃して、戦闘適齢期の少年や成人男性を全員拘束して連行する。タリバン戦闘員を拘束するというよりは、情報収集が目的なので、全員を連れ去って尋問(時には拷問)をし、4、5日で釈放というのが一般的なやり方であるという。たまに襲撃に驚いて家人が抵抗したり、家から出ようとして、射殺される場合もある。
ISAF 側は、一般的な昼間の戦闘に比べて、「市民の死傷者が少ないので、効果的な戦略だ」と「夜間襲撃」には積極的で、カルザイ大統領が止めるように要求しても、怒りが頂点に達したアフガン市民の反欧米デモが起こっても、止める気配はない。拘束されても、釈放されるので、確かに市民の死傷者は少ない。だがアフガン市民の生活や地域社会に与える影響は甚大である。たとえば、カンダハルはタリバンの支配下にあり、住民の95%はタリバンに協力する。拒めばそこには住めないほどの危険が生じるからである。そこにISAF の夜間襲撃が行われて、情報提供を求められるため、結局は一般市民が両者の板挟みになって追い詰められているのである。
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