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2011-10-17 00:00
(連載)TPP交渉への参加表明を恐れるな(1)
角田 勝彦
団体役員
環太平洋連携協定(TPP)の交渉参加をめぐる論議が激しくなっている。農業関係者などの反対は強いが、米国の対応を見ても、交渉への参加は即TPP(とくに例外なき自由化・関税撤廃の原則)参加を意味しない。民主党は、党内融和を最優先にしてきた野田首相がようやく行った決断を尊重し、11月にハワイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、我が国のTPPへの交渉参加を表明することを受け入れるべきだろう。
政府は10月11日、野田政権発足後初めてとなる経済連携に関する閣僚会合を首相官邸で開き、TPP交渉参加問題に対する協議を本格化させた(すなわちTPPは当初予定されていたのと異なり「国家戦略会議」外で協議されることになった。民主党にはTPP問題を扱うプロジェクトチームもある)。会合では意見が分かれ、国民に対しTPP交渉に関する情報をできるだけ示すことが確認された。TPPには閣内や与党内でも反対論が多い。議員連盟「TPPを慎重に考える会」会長を務める民主党の山田正彦前農相は、反対署名集めが10月14日時点で192人に上ったとして「TPPを本当に強行するなら、党内は二分されてしまう」と党内の推進論を牽制した。
TPPは 2006年の発効時のシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの四カ国に米国(2009年)や豪州などが加盟を表明し、九カ国で締結に向け交渉が進められている経済連携協定(EPA)である。農産物を含めて貿易自由化の例外を原則的に設けず、関税の100%撤廃を目指してルール作りを進めている。つまり、自由貿易協定(FTA)の延長で、経済規模から見て米国との関係が中心となる。世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)が 目標としていた年内の部分合意すら困難になった現在、EPAやFTAによる地域自由化の推進が図られるのは世界の趨勢であり、来年1月にも発効する見通しの米韓FTAもその一例である。ちなみに、発効から5年以内に、95%の物品で両国の関税はゼロとなり、オバマ政権は、その経済効果を、年間110億ドル(約8500億円)、7万人以上の雇用創出と見込んでいる由である。
TPPは、米国にとり、このような直接的利益のみならず 世界経済の成長拠点であるアジア(その貿易量は1990年以降約3倍に急増)で米国が主導する経済圏を作り、影響力を強めつつある中国を牽制する政治的意味も持つ。参加は「親米経済圏」入りを意味しよう。米国は、自由貿易体制を強化し中国を牽制する上でも、日本の参加に強く期待している。米国は日本政府が5月日中韓首脳会談で日中間FTAに関する検討の前倒しで合意したほか、EUともEPA交渉に向けた予備交渉の早期開始で一致したことも気にしていたとされる。(つづく)
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