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2011-10-18 00:00
攻めの人事なら、自民は幹事長を石破に代えるべきだった
杉浦 正章
政治評論家
木の葉に姿を真似る昆虫がいる。擬態という。その擬態を民主党政権がやっている。組織も政策も自民党へと擬態されて、総裁・谷垣禎一以下自民党執行部は、攻めるに攻めきれないでいる。とりわけ新役員人事から石破茂を外したのが致命傷だ。執行部の発信力が5分の1になった。新任の政調・総務両会長は“超地味”で、陰うつだ。ろくろくテレビにも顔を出さない。幹事長・石原伸晃も、2代目だけあって迫力に欠け、方向性もあさってを向いている。在野党2年でぼけては、政権党復帰など遠ざかる一方だ。民主党政権に対する自民党の戦略は、今までが楽すぎた。というのも、憲政史上珍しいほどの「愚痴無知指導者」が2代も続いたからだ。ルーピー鳩山由紀夫やペテン師菅直人の場合は、自分が落とし穴を掘って、自分で落ちているのだから、それを待っているだけでよかったのだ。しかしその菅ですら、解散に追い込めなかったのだから、谷垣執行部の力量が今ひとつだったということなのだろう。
同党の新役員人事について、派閥の弊害を説く議論が盛んだが、弊害と言うほどの派閥組織があるのか。朝日が社説で説いたから、一犬虚に吠ゆれば、万犬実を伝うではないのか。派閥の弊害とは、自らの勢力をカネで囲い込み、利権を集団で求めることを指した。そんな力はいまの自民党派閥にはなく、政策グループと化している。野田が小沢グループを取り込んだ人事を「適材適所人事」でほめるが、これこそ派閥均衡人事ではないのか。マスコミも馬鹿の一つ覚えのような自民党叩きの筆法は改めた方がよい。自民党人事の最大の欠陥は、敵前で先頭を走る勇将を左遷してしまった、野党ぼけにあるのだ。テレビでもネットでも自民党で一番露出度が高く、評判のよい役員は、政調会長・石破であった。発言に野党に対する破壊力があるのは、石破だけと言ってもよい。その広告塔とも言うべき存在を、閑職に追いやってしまって、辛気くさい役員ばかりで戦えるかと言うことだ。おまけに石原は方向性が怪しい。“論客”が聞いてあきれる発言を繰り返す。
財務相・安住淳が「消費増税法案を来年成立させたい」と発言すると「2年前の選挙では、マニフェストで消費税を上げないと言って勝って、今度は上げると言うのはおかしい」と批判した。大矛盾は自民党も消費税の10%アップが公約であり、「民主党政権が引き上げるのが悪くて、自民党政権ならばよいのか」ということになる。論理破たんだ。もうマニフェスト批判などはマンネリで聞き飽きたのだ。加えて、石原発言は、政権党だったら首がいくつあってもたりない暴言を繰り返している。9.11テロを「歴史の必然」、放射線測定を「市民に線量を計らせないようにしないといけない」、反原発を「集団ヒステリー」と決めつけると言った具合だ。異常としか言いようがない。しまいには自民党支持率の低迷を「自民党を批判するテレビのコメンテーターが悪い」とのたまった。自民党が攻めの人事をするのなら、幹事長を石破に代えるべきだった。一方で谷垣は、まじめで攻撃力欠如の優等生発言を繰り返している。政調会長・茂木敏充、総務会長・塩谷立、国対委員長・岸田文雄も、就任以来半月間、鳴かず飛ばずで閉じこもっている。
これでは、野党ぼけも極まった。10月20日からの臨時国会について石原は「臨時国会は民主党政権の終わりの始まり。来年の通常国会を主戦場ととらえ、解散総選挙に追い込んでいく」と勇ましいが、攻めあぐねているのが実態だ。最大のアキレス腱である小沢証人喚問も、お経のように唱えるだけでは、らちが開かない段階だ。参院の多数を利用して採決による喚問実現の構えを見せてはじめて動くのに、気がつかない。3次補正も細部では修正出来ても、人質にとって早期成立を阻むようなことはできまい。「のらり、するり」と逃げる野田政権をどう攻めるかだが、これは石原のように焦っても始まらない。TPPにしても、消費税にしても、普天間移設にしても、民主党政権は党分裂にもつながりかねない超重要課題を抱えている。特に普天間は政府が環境アセスメントを年末までに県知事に提出するが、こじれていてとても解決のきっかけなどにはなるまい。野田は「語れば済む」段階から「選択と実行」の場面に移行せざるを得ない状況に置かれている。その間隙を突くしかない。
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