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2011-10-31 00:00
政府・日銀の為替介入に寄せて
宮崎 厚
ベンチャー企業顧問
10月31日午前10時半過ぎに、政府・日銀が為替介入したようですが、これに関して私見を申し上げます。
何故、真昼間の東京市場に一度に介入したのか疑問です。私なら、夕方、東京市場が閉じた後、欧州市場からロンドン、そしてニューヨークと反時計回りに介入してゆきます。そうすると、介入資金量も少なくて翌日の東京市場へ与える影響は大きくなり、介入はより効果的になると思います。一時にいきなり3円もの円安を起こすより、相場というものは1分、5分ごとに必ず上下するものであり、円安に振れたときは一層ドルを買って煽り、円高の時には円売りで抑え、小出しにしながらジグザグで円安へ誘導してゆく方が、より効果的で、介入資金も少なくて済むのではないでしょうか。
今回のように、政府が東京市場に露骨に瞬間介入すると、今後他国から非難を受ける可能性が高く、他国の為替管理に抗議できなくなる可能性があります。介入するのであれば、総合的金融財政政策の一環として継続可能な、政策的権威を保って対応するべきであると思います。安住財務相が、「為替の投機的な動きに対しては断固とした対応をする」、「納得いくまで介入する」などと発言し、また先般はG7で消費税引き上げについて海外で言及していますが、財務省は、本当に国際経済の生の動きを見ているのでしょうか。
私の解釈では、米国は、金融錬金術に乗った消費力で世界経済の中心であった政策を転換し、ヘッジファンドや投機筋にはしっかり規制を掛けて抑えながら、実体経済、輸出振興によってハードソフトを問わず供給力によって世界市場に打って出る方向に転換しています。そのためにトレンド的なドル安誘導政策が行われています。そんな時に、かつてのはやり言葉で「投機、投機」といっても、表向きだけの発言ならともかく、本気であれば的を外しています。
また、株式、債券金利、商品相場などいろいろありますが、私の経験では、為替相場ほど予想し難いものはありません。現に円の需要が高くて円高と言っても、果たしてその犯人と想定する投機筋は手にした円を何に使っているのかわかりません。経済の複雑な相互関係の調和や均衡の中で、あるべき水準などは無く、為替水準は結果であると思います。日本経済が上手く回れば、それが納得する水準です。
いずれにしても政府・日銀は、決して上手なやり方とは思えませんが、一方では為替介入で一応円安誘導を目指し、他方国内政策の増税を世界に約束して、日本経済を消費や需要喚起ではなく、輸出はしたくても輸入はしたくないと言った自己完結的に仕向けることは、国際経済的観点からは矛盾だらけです。もはや経済外交とは、世界情勢に対する読みや潮目を見定めて、先行して進めなければ世界に力負けしてしまいます。為替介入にしても、タイミングを失せず大胆に行動する必要があり、その結果も瞬間的効果よりも持続するものであるよう、介入方法について一層工夫する必要があると思います。これらは日本の政策当局に、世界と渡り合う国際感覚と技量と能力があるかどうか、今、我々国民が問いかけているのです。
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