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2011-11-04 00:00
待たれる読売の電子新聞化
杉浦 正章
政治評論家
文化の日だからたまには政局を離れて高尚な「Webと新聞」の話しをするとしよう。新聞の電子新聞化が日本でも進んでいるが、天下の大新聞だけがいまだにその動きを見せない。朝日と日経が先行して地歩を固めつつあるのに、読売だけが、のほほんと宅配と駅売りの旧態依然たる手法に頼っているのだ。筆者はネット人口は増加の一途をたどり、将来は圧倒的多数がネットで新聞を読む時代が迫っているとみる。読売だけが参加しなければその貴重な論調が欠落したまま、「Web界」の論調に朝日が決定的な力を発揮する構造が築き上げられることになるのだ。ネット社会においても多様な言論活動が必要であり、その意味からも読売の参入は不可欠である。 若者の活字離れが叫ばれているが、実は若者は活字離れをしていない。逆にWeb上の活字へと“民族移動”しているに過ぎない。その例を挙げると、新聞だけでなく出版のWeb進出の遅れはいかんともしがたい状況にあり、アマゾンがようやく本格参入しだした段階だ。このため若者の間では待ちきれずに「自炊」が流行し始めている。筆者も半年前から「自炊」に熱中している。「自炊」とは本を裁断機で裁断して高速スキャナーで読み込み、iPadで読むことを言う。最近の傑作は「坂の上の雲」をまた読もうと、全6巻の文庫本をiPadに移したが、一挙に画面が大きくなって読みやすい。古本屋で50~60円の文庫本だ。もったいないと思う人種は時代遅れだ。書斎の本をいかに減らすかの時代なのだ。アメリカ並みに出版がWebと同時に行われれば問題のない話しだが、日本では過度期的に「自炊」なのだ。自炊をしては本の山を片づけるのだ。
新聞についてもWebで読む癖がついてしまった。紙面ではどうも頭に入りにくい。時々読売に関しては「新聞自炊」をやっている。よくWebでは新聞の持つ一覧性がないと言うが、日経、産経は紙面をそのまま、朝日はニュースに強弱を付けた横書きで提供している。全く不便は感じない。昔読売新聞のご老体が「新聞はトイレで読めるがパソコンはトイレにない」と宣うていたが、iPadはトイレで読むための道具でもある。またWebでは情報の収集の仕方が、トップ見出しの記事から読むとは限らない。逆に読者はまずテーマを設定して、検索にかけてから読むという傾向がある。いわば逆引き広辞苑の発想である。例えばTPPと検索に打ち込んで、ずらりと並ぶ記事・論調を選択して読むのである。これに読売が欠けるのはいかにも残念ではないだろうか。
もちろん今の読売のサイトを見れば、社説までは無料で見られる。しかし、特集記事や解説記事はサイトには載らない。本記も全文は乗らないケースが多い。読売は全国一の発行部数を維持してきたが、ここに来て17年ぶりに1千万部を切った。朝日も部数を減らしたが、逆に電子新聞は5月18日の創刊以来10月29日の5か月で5万部を突破した。日経は電子新聞の有料部数が2010年創刊以来14万部に達している。朝日の電子新聞購読者の中には本紙代3800円に1000円上乗せするだけで読めるから、ダブって購読する向きも多いようだ。朝日の場合、iPhoneに特化した電子新聞も読めるから、電車の中だろうが新聞を持ち歩く必要がない。新聞が付いてくるのだ。
読売はとっくに電子新聞の研究には着手していると聞く。94年には新聞制作システムの画像・記事データを利用し、衛星回線経由での電子新聞プロトタイプのデモを行っている。技術的なノウハウは蓄積してあるに違いない。このまま「紙」に頼っていては経営的にも発展性があるまい。そのうちに若年層が電子新聞へと移行し、高齢者ばかりが読者層となって「爺婆新聞」と言われかねないのだ。社説や解説、特集など読売の論調が朝日に対峙していることは、読者の判断力を多様化し、我が国民主主義の育成にどれほど役立っているかは計り知れない。例えば原発再稼働推進の論調が朝日の否定的な論調と対峙していれば、読者は選択肢が増える。言うまでもなく販売店対策が重要なポイントとしてあるのだろうが、ことは採算性の問題だけではあるまい。Webというこの大きな情報伝達の構造の中に入ることに意義があるのだ。読売が朝日に席巻されるまま拱手傍観していては、日本社会のためにはならない。「ネット言論界」のためにもならない。知恵を出せば電子新聞と販売店は共存できる。朝日、日経、産経が可能で、読売が不可能であるということはあるまい。経営陣は早期に電子新聞発刊に踏み切るべきだ。
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