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2011-11-08 00:00
(連載)自衛隊の南スーダンPKO派遣とPKO5原則(2)
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
しかし、すでに2000年に発表された『ブラヒミ・レポート』は、(1)当事者の同意、(2)中立、(3)武力行使を自衛の場合に限定、の三原則はPKOの根幹的原則であるとする一方で、その機械的適用は好ましくないという見解を示している。すなわち、「和平合意を破り、平和維持活動を武力により妨害しようとする勢力(=スポイラー)に対しては、軍事的手段もとられるべきであり、全当事者を平等に扱うことは、PKOの無効化をもたらすばかりか、最悪の場合は悪に荷担するに等しい。スポイラーに対しては、国連憲章の諸原則とそれに基づくマンデートに従って、誰に対しても同じ基準で必要な対応をとる。PKOの原則としての中立性は、こうした公平性に基づくものであるべきだ」、と『ブラヒミ・レポート』は指摘している。
議長声明は、こうしたPKOの在り方の変容を追認したものであり、内容は目新しいものではないが、象徴的な意味は大きい。しかし、我が国のPKO5原則は、20年以上も前の「古典的な」PKOの在り方に立脚したものとなっている。すなわち、「中立」「当事者の同意」の偏重である。具体的にはPKO5原則の(1)紛争当事者間の停戦合意、(2)紛争当事者の受け入れ合意、(3)中立的立場の厳守、(4)以上のいずれかが満たされなくなった場合は撤収、の4つがそうである。
PKOにおいて「公平」を重視するということは、必然的に任務の遂行を妨害する勢力には、武器を使用してでも妨害を排除すべしということになる。それゆえ、PKO参加原則を「中立」から「公平」に改めれば、武器使用基準は自ずから適切なものになるという理屈になる。武器使用基準の緩和だけに焦点を当てるのは議論の矮小化である。
そして、そもそも南スーダンでは、北部で部族間対立が続いており、政府軍と反政府武装勢力の衝突により多数の死者が出ている。これでは、厳密にいえば現行PKO5原則が満たされているとは言えず、自衛隊を派遣するのは無理であるということになるはずである。自衛隊の南スーダンPKOへの派遣に際して、PKO5原則についてなすべきは、これを安保理議長声明で示された「公平」重視というPKOの在り方の変容に沿ったものに、根本的に改めることである。(おわり)
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