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2011-11-11 00:00
(連載)今次、TPP交渉参加の問題点(1)
島田 晴雄
千葉商科大学学長
野田佳彦首相は来る11月12~13日にハワイで開催されるAPEC首脳会議で、TPP交渉参加の意志表明をする腹づもりのようだ。TPPは自由貿易を促進する国際協力のひとつで、私は元来、自由貿易が、関係諸国の経済効率を高め、人々の生活水準の向上に役立つ限りにおいて、自由貿易の促進には賛成する立場をとって来たし、また現在でもその立場に変わりはない。その意味で、TPPの目的や広域自由貿易圏をつくろうというその趣旨には賛成である。しかし今回のTPP交渉に参加するかどうかという個別具体的な問題については、いわば戦術的な意味で、多いに注意して置かなくてはならない問題があることを私達は充分に自覚しておく必要がある。
TPPは2006年に、シンガポール、NZ、チリ、ブルネイの4カ国からなる通称P4の自由貿易協定としてスタートした。環太平洋地域の諸国にその頃から参加の呼びかけが行われた。2010年までに、アメリカ合衆国、オーストラリア、ヴェトナム、ペルーが加わり、やや遅れたマレーシアが参加したP9となった。TPPは貿易財については全品目にわたって即時ないしは段階的に自由化をめざし、またサービス、政府調達、競争政策、知的財産権、労働移動などについては包括的な協定をめざす、としている。日本は過去数年にわたって参加の誘いをうけていたが、実質的な対応はとっとこなかった。2010年11月の横浜APEC首脳会議に際に菅直人首相がTPP参加を検討すると発言したが、その後は、ほとんど実質的な動きはなく、また情報の収集も、分析もしてこなかった。情報の収集は、参加国でないから蚊帳の外に置かれたという事情もあったが、参加・不参加の功罪は、農林水産省や経済産業省が、それぞれ数兆円の違いになるとしてかなり粗っぽい前提の下で全く異なった主張をした程度で、総合的、本格的な政策分析が行われたとは言い難い。
一方、この数年、TPPの枠組みの中で、24の分野で作業部会が立ち上げられてかなり詳細な議論をしていると伝えられ、また、これまでに9回にわたる全体会合が参加各国の持ち回りで開催されて来ており、TPPの内容について相当進んだ議論がなされていると推察される。推察というのは日本は参加表明をしていないという理由で情報が政府当局にも提供されていないからである。こうした状況の下で、来る11月12~13日に野田総理は交渉参加の意思表明をすると推察されるが、上記の状況は、国益を最重視しつつ参加する国際交渉の常識から見ると極めて異様な状況に見えるので、ここでいくつかの点について改めて注意を喚起し、日本としてどう行動するのが国益にかなっているのか、ここで考えてみたい。
(1)TPPに関する内容や規約はこれまでの参加国の間ですでにほとんど詰められているように推察されるが、これに参加するとなればアメリカに次ぐ市場を提供することになる日本にその内容がほとんど知らされていないという状況は奇異であり異常である。事前の検討のために必要な情報がない中で参加の意志決定が迫られるとう不自然さは納得しがたい。参加国でないから情報は提供できないという建前のようだが、参加するとなれば大規模な構造改革や制度改革が必要になる可能性が大きく、経済構造や国民生活に重大な影響の及ぶ可能性が大きいこうした国際協定の議論の中味を未参加だからという理由で情報開示をしないことは妥当ではないだろう。
(2)参加している9カ国の中ではアメリカが圧倒的な比重を占めており、他は小国なので、アメリカが貿易と投資で実質的な成果を挙げる目的でTPPを利用するならば、中国が参加しない以上、その最大のねらいは当然、日本を巻込み日本の市場に浸透することと考えられる。実際、日本が参加すれば日米両国のGDPの比重は9割を超えると推察される。(つづく)
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